自動組版のコストの考え方

自動組版の導入に当たっては、導入費用ばかりに目がいきがちです。確かに導入費用は嵩みますが、それによって得られるコスト削減効果を計算しなければ、それが高いか安いかは分からないはずです。

検討に当たっては導入によるコスト削減効果をしっかり計算しすることが必要です。

増えるコスト

増える方は比較的計算しやすいです。増えるものとしては

  • 導入費
  • 維持費、管理費
  • 教育費

などです。このうちパッケージの導入やサービスの利用では、最初の2つの項目はあらかじめ提示されている場合が多いです。開発してもらう場合でも、開発業者が提示してくれるため、計算することはありません。自社開発の場合は開発工数(作業時間)から計算する必要がありますので、少し面倒になります。

教育費は、社内マニュアルを作成したり、引き継ぎなどで発生します。簡単には計算できませんが、導入費に比べるとかなり少ないので場合によっては無視できます。

減るコスト

減るものとしては次のものがあります。

  • 作業費
  • 消耗品費

このうち消耗品費は校正紙代や電気代で、非常に少額なので無視できます。従って作業に掛かる人件費の減少だけを計算します。実際の人件費は、残業が減らない限り減少しないのですが(裁量労働制で減らないところもあるでしょうが)、作業時間が短縮することから、それを別の仕事に当てたり人員配置を変更するなどで、必ず効果が見込めます。

作業費について単純に計算するのであれば、

  作業費=作業者の時間単価×作業時間

  作業者の時間単価=人件費/労働時間

ですから減少する作業費は

  作業費=減少する時間/労働時間×人件費

となります。つまり総労働時間と人件費が分かっていれば、あとは短縮される時間を見積もることで減るコストが計算できることになります。なお、計算する時間の単位については年間計算でも月間計算でも構いません。

 

試算例と目安

例えば次のケースではこうなります。

 

80ページの文章主体の冊子で、基本的にはコピー&ペーストして、その後体裁を整える必要があるもの。
開発費 100万円
現状の作業時間 初稿出しまで140時間
自動化後の作業時間 初稿出しまで5分(ほ0)
作業者の月間作業時間 176時間(8時間×22日)
作業者の人件費 月60万円(給与+社会保険料+etc)

 

この場合減少するコストは

 40/176×600,000

136,363となります。つまり完全に持ち出しとなるわけですので、単発の案件での自動化は難しいということになります。ですが、これが月間定期案件であれば、毎136,363円ずつコスト減になりますので、8カ月作業した時点でプラスに転ずるということになります。

一般的な目安としては、1つのレイアウトパターンでおよ100ページを組むことができるかが分岐点になります(肌感覚ですが)。ものによって50ページでトントンの場合もあるかも知れませんが、複雑なプログラムの場150ページが分岐点ということもあります。

ただ、自動化による省力化は単にコストだけの問題ではなく、作業者のモチベーションアップであったり、空いた時間により高度な業務を行うことによって生み出す価値があったりしますので、これは指標の一つと考えてもらった方がよいと思います。