自動組版の種類
ここではレイアウト別に自動組版を解説します。というのは、レイアウトによって自動組版へのアプローチが大きく異なるからです。自動化したいレイアウトはどれに当てはまるのかをしっかり見極め、それに合った手順をとることが肝要です。
なお、アルバム(写真集)のような形態はここでは除外しています。
領域固定型(チラシ・カタログなど)
いわゆるコマパターン型です。スーパーのチラシや不動産情報誌、中古車情報誌など、ページの中にコマといわれる小領域を隙間なく配置する紙面形態です。
コマパターンといえば自動組版ソフトというくらい、自動組版との相性が良いです。1つのコマサイズ・1つのコマ内レイアウトであれば自動組版ソフトは不要です。InDesignの「データ結合」+JavaScriptであふれ処理等ができれば一人で十分に作成可能です。
問題となるのは2倍サイズ・4倍サイズなど、コマの大きさが変わったり、コマ内のレイアウトが複数ある場合です。複数のコマレイアウトパターンを用意しなければなりませんが、コマ配置場所の指定方法、選択するレイアウトパターンの指定方法を別途考えなければなりません。
そのためには組版ソフトの知識だけでは不十分です。レイアウトを指定するための方法も検討しなければなりません。しかも大体はコンテンツと紐づけておく必要がありますから、コンテンツの格納形式から制約を受けることも多いです。
領域固定型でコマごとに校正を出すパターン
コマパターンでありながら、一気にページを組めない形のものがあります。それはタウン誌などによくあるお店の紹介ページです。コマ内のレイアウトは定型化されているのですが、掲載店ごとに校正を出して校了をもらい、校了が出そろった時点でページ組を行うものです。
この場合は2段階で自動組版を作成する必要があります。1つはそれぞれのコマ内で行う自動組版。もう1つはコマをページ内に配置する自動組版です。
まずコマ内で自動組版を行う部分ですが、これを「1つだけのデータ結合」と捉えると失敗します。1つのコマを表示するだけですと校正を出すときにかなり余白が出ます。この余白にどのような付加情報を載せるかで校正の価値が変わります。まず、文字量が多くて顧客に削ってほしい場合は組版時に長体をかけたりせずあふれた部分をあふれとして表示します。基本的な情報としては管理番号や出力日時、校正回数は表記しましょう。月刊でしたらどの号か、また顧客担当者情報を入れてもよいかもしれません。オペレータの品質保証印枠を作っておく場合もあります。
コマ校正はPDFで保管しておくのがおすすめです。ライブラリやスニペットを使う手もありますが、個別に校正を行った場合は付加情報がありますので、表示される部分だけを取り出して保管するのは面倒です。ページ組の際にPDFの必要な領域だけ表示させるようにしたほうがプログラムも楽ですし、部品の一元管理もできます。
領域固定型のハードル
領域固定型では、レイアウトを指定する方法を検討しなければなりません、と書きました。この時点でレイアウトソフトから離れることになりますので、手が出しにくくなります。実はもう1つ自動組版のハードルを高くしているものがあります。
レイアウトの指定者があなた自身であるということはあまりないでしょう。指定者は顧客であったり案件の管理者であったりします。そのことはつまり「自分で使うのではなく、人に使わせるためのプログラムを書く」ということです。
自分でするのであれば誤入力はあり得ないし手順もわかっています。しかし人にさせるというと、誤入力を防ぐために「選択肢をリストボックスにする」「全角数字を半角に変換する」「余計な空白を削除する」といった基本のことから、その案件に応じた入力設定まで新たにプログラムしなければなりません。また場合によっては「作業手順マニュアル」も作成しなければなりません。
その手間を考えると専用の自動組版ソフトも高くないと思えてくるかもしれません。
領域可変・ページ数固定型
「1ページ完結あるいは見開き完結で、入る項目も大体決まっている。だからデータベースにはなりそうなんだけれど、顧客によって文章量や写真点数が違っていて、それに応じて個別に試行錯誤しながらレイアウトをする必要がある。」
そういったものを「領域可変・ページ数固定型」と名付けてみました。基本体裁はあるのに8割以上イレギュラー、みたいな感じですね。実はこのケース、私なら自動組版できます(言い切って大丈夫かなあ)。
何故か。それは、人間の試行錯誤や判断をプログラムに落とし込んで、「プログラム自体が試行錯誤をしたり判断したりして組み上げる」ようなプログラムを作るからです。といっても簡単ではありません。そのためにはオペレーターの思考回路をコンピュータに落とし込めるまでヒアリングを行います。
領域無制限型(マニュアルなど)
小説やエッセイ集などのように文章量に制限がなく、そのため、文字間を詰めたり変形したりというレイアウト上の制限のないものを「領域無制限型」としました。
本当に文字だけならWordでもできますし、Webサービスもあります。さすがにこれを自動組版だといっても仕事は来ません。少なくとも図や注釈、表などが文章の間に入ってくるものでないと自動組版で楽になったという気にならないと思います。
そこで代表的なのが「マニュアル」です。文字主体ながら所々に図や表が入る。また、注釈や追加項目が入ってそこだけ文字が小さくなったり罫で囲んだりアイコンが入ったり。また数ページにわたって表が続いたりして本当に多種多様です。
実は「ページを跨ぐ」ということがなければ難しくなくて、流し込みだけで終わらせることもできるんです。実際、大きな図が入ったら余白がどれだけあろうとも次のページに送ってる本もありますけどね。
それを「きちんと体裁を整えよう(ページの余白を少なくしよう)」とすると難しくなります。私はそれができるシステムを知りません。もしかしてどこかにあるのかも知れませんが。
領域無制限型で部分ごとに校正を出すパターン
以前はあったんですが、最近はほぼありません。何かというとそれは「事典」です。
基本は文字だけなんですが、著者が複数になるので、項目ごとに校正を出します。校正の出し方はコマと同じですが、項目によっては複数ページになることもあります。コマと異なるのは、各項目で校了になったら校正用の組版データは不要になることです。データベース内が校了の状態であればよいのですから。
全ての項目が校了になった時点でページアップを行います。データベース内の項目を五十音順に取り出して組み上げます。内容によっては、項目ごとに組んでいくこともあるかと思いますが、私が主にやっているのはタグ付きテキストを使う方法です。
タグ付きテキストのヘッダ部を記述しているファイルに、項目ごとにタグ付きテキストを追記していく方法です。全項目をテキストファイルに追記したらそれを読み込んで本文終了です。あとは柱をいじったり、項目のページ番号を取得してデータベースに書き戻したりしました(索引用)。
入力・管理画面を作成する必要はありますが、総じて難易度は低いです。でも多分こんな仕事はもうないです。
複合型
あとは今までのパターンの組み合わせになります。どんな複雑そうに見えても、実は入れ子になっているだけとか、組み合わせているだけで実は単純なのかもしれません。よく観察し分析することです。