InDesign CC2019(14.0)のデータ通信量が異常なので使用注意
InDesign CC2019を使ってみた方は「異常に重い」と感じられたと思います。実はInDesign起動時にネットワーク通信を行って大量のデータをダウンロードしているのです。然るべきところに報告しましたのでいずれアップデートで改善されると思いますが、それまでの手段として書いておきます。
InDesign CC2019では、Adobe Fonts(Typekitから名称変更)のフォントを、インストールすることなくプレビューできる機能が付きました。そして気に入ったものがあればそれをアクティベートして即使うことができます。画期的なのは、これがIllustratorと同時に搭載されたことです。今までは先にどちらかのアプリケーションで搭載されて、ということが多かったんですが。
以上が話の前提になります。
さて、InDesign CC2019が大量のデータをダウンロードしているというのは、Windowsの場合はリソースモニターを起動してネットワークの項目が見えるようにしておきます。Macの場合はアクティビティモニタを起動して同じくネットワークの項目が見えるようにしておきます。その状態でInDesignを起動するとInDesignが行っているネットワーク通信量を見ることができます。Windowsの場合にはさらに、通信先がdeploy.static.akamaitechnologies.comであるということもわかります。
では何をダウンロードしているのか。ダウンロードした時刻からファイルを探しましたよ。そして見つけましたよ。
私の環境では、次のようになっています。
Windows C:\Users[username]\AppData\Local\Adobe\InDesign\Version 14.0-J\ja_JP\Caches\TypeQuestCache (550MB) macOS /Users/[username]/Library/Caches/Adobe InDesign/Version 14.0-J/ja_JP/TypeQuestCache (850MB) (ちなみにOSは、Windows 10 Pro (1709)、macOS 10.13.6 です)
これが初回起動時だけならまだあきらめもつきますが、起動のたびにダウンロードが発生します。特に私のMacではダウンロード量が多くて、一回の起動でフォルダ内の半分のファイルが入れ替えになるという状態です。ダウンロード時間は、私の環境では長い場合5分間続きます。
このTypeQuestCacheとは何をするものなのかを突き止めなければなりません。名前からすると文字やフォントに関するものだと推測できますが、ここでInDesignの[環境設定]-[テキスト]のところにある[「さらに検索」で日本語フォントを有効化]の項目の注意アイコンが気になりますね。「ネットワークの通信容量が大きく消費されます。アプリケーションを再起動して変更を適用します。」とあります。調査したタイミングではこのチェックはオンになっていました。そこでこのチェックをオフにします。また、TypeQuestCacheフォルダの中身を全部削除して、InDesignを再起動します。
するとWindowsの場合で550MB→400MBになりました。つまり、日本語フォントを無効化すると150MB減少したわけです。ということは、これはAdobe Fontsのプレビューを表示するためのキャッシュに違いないとわかります。(しかし注意書きはひどいですね。日本語フォントの有効/無効はあんまり関係ない。欧文フォントだけで400MBなんて。将来もっと大きくなるのかしら)
前置きでも書いたようにこれはIllustratorと同時搭載なので、このキャッシュはIllustrator CC2019でも作られています。IllustratorでのTypeQuestのキャッシュフォルダはWindows C:\Users[username]\AppData\Roaming\Adobe\Typequest\Adobe Illustrator 23 (350MB) macOS /Users/[username]/Library/Caches/Adobe/Typequest/Adobe Illustrator 23 (370MB)
にあります。しかも容量はInDesignの約半分です! さらに、毎回半分程度更新されるInDesignに比べてIllustratorではほとんど更新されません。ということで、次のことがわかります。
InDesignとIllustratorで同じ機能を搭載したにも関わらず、別々のキャッシュフォルダを作成している
↓
開発はInDesignチームとIllustratorチームで別々に行った可能性が高い
↓
InDesignの方が極端にダウンロード量が多いのは、プログラムに何らかの問題を抱えている可能性が高い
ということで、修正して欲しいことは次のものです。
- InDesignの方にバグがあると思われるので、キャッシュの更新をIllustratorと同じタイミング・同じ頻度・同じ量になるようにしてほしい
- キャッシュをIllustratorと共通して使うようにしてほしい
- そもそも、この機能自体を有効/無効にできるようにしてほしい
2番目のものは、Illustratorの方でも修正が必要になる(フォルダを変更するだけでよいと思われるのですが)ものです。
そもそもの問題が、「同じ機能を実現するのに、なぜ別々に開発するのか、開発チーム間で情報共有しないのか」という話なんですが、これは別にここに限った話ではないので割愛します。
ちなみに、ですが、InDesignのどのモジュールがこの通信を行っているのか調べました。CEP Extensionやプラグインを有効/無効を色々変えてみて試したところ、「Character Panel.apln」というプラグインがこの通信を行っています。このプラグインを無効にしてやれば通信は発生しません。ただ、このプラグインはその名のとおり、文字パネルの機能を提供しているので、残念ながら無効にするとInDesignでテキスト操作がほぼできないという結果になってしまいます。
ちなみのちなみですが、このプラグインのファイル容量は、CC2017で856KB、CC2018で929KBなんですが、CC2019では1,888KBと倍増しています。
さて、当面の回避方法ですが、いくつかあります。
1. ネットワークにつながない
LAN環境でしたらネットワークケーブルを外す、無線でしたらオフにするなど、ネットワークに接続しなければ問題はありません。ただ、ネットワークプリンタが一時的に使えなくなったり、ホームページを見れなくなったりと、不便な点はあります。逆に仕事に集中できる人がいるかも知れませんが。私はお勧めしません。
2. InDesign起動後5分間は作業しない
いっそあきらめて、ダウンロードが終わるまで他のことをしましょう。ネットワーク速度にもよりますが、私の環境では5分経てばダウンロードは終了します。その間パソコンは触らず、他のことをしましょう。もしくは、いつもより5分早くパソコンを立ち上げましょう。Adobeに相談したら多分この答えが返ってきます。
3. InDesignからのインターネット接続を遮断する
InDesign CC2019だけ、インターネットに接続できなくします。これはファイアウォールの設定で実現できます。
Windowsの場合は標準機能で可能ですので、お勧めです。私はこれを行っています。具体的な設定方法はブログの次のエントリに書きます。
Macの場合は設定がよく分かりません。ファイアウォールはデフォルトでオフになってるし、オンにすると(禁止ではなく)通信を許可するアプリケーションを指定しなければならないしということで、かなり厄介そうです。有料製品を購入した方が楽な気がします。
ほかにもあるかもしれませんが、お好みの方法で回避してください。