IllustratorにInDesignの表を配置、InDesignで再編集
Twitterでの発言を解説します。といっても半分はものかのさんが調べてくれたことですが。ものかのさんにはいつも助けていただいています。
さて、ことの発端は、InDesign CC2019があまりにもデータ通信量が多くて重くなるので、いっそのことInDesignの通信をブロックしてやろう、と考えたんです。で、その状態で使えなくなる機能はないか、CCライブラリは大丈夫かと確認したところから始まりました。
結論は、CCライブラリは別プログラムだったので問題なし、ということなんですが、「そういえばCCライブラリってあまり使ってないな。AdobeのWebサービスも以前に比べて安定してきたし、InDesignとIllustratorのデータ共有もできるってどこかで読んだし」「そういえば大阪の勉強部屋でInDesignの表をコピペでIllustratorに貼っていたね。CCライブラリを経由するとどうなるんだろう」ということで横道へ。
まずはInDesignで表が入ったテキストフレームをそのままCCライブラリパネルへ(テキストとして追加)。これをIllustratorで配置したら表じゃなくなってしまいました。これは失敗。
ということで、ここまでが前置き。この先に手順を書きます。
以下の手順はInDesign、IllustratorともにCC2019です。ものかのさんによるとCC2015以降で可能だそうです。ただCC2015の最初のバージョンではちょっと怪しい。最終までアップデートしてください。
また、CCライブラリとは何かについてはCreative Cloud ライブラリを見てください。
手順1 InDesign
まず、InDesignで表が入ったテキストフレームをCtrlキー(Macでは⌘キー)を押しながらCCライブラリパネルへ(グラフィックとして追加)ドラッグ&ドロップします。もしくは、テキストフレームを選択した状態で、CCライブラリパネルの左下の+をクリック→グラフィックをクリック、でもOKです。
登録されるとグラフィックの欄にあることが分かります。
手順2 Illustrator
ここからはIllustratorでの作業です。
配置したいドキュメントを開いて、CCライブラリパネルから先程のアセット(登録したものをこう言います)をドラッグ&ドロップで配置したい場所に置くだけ、です。注意点は、何も考えずにそのままドラッグ&ドロップだけすること。そうするとリンク配置になります。これを「コピーを配置」とか「埋め込み」とかしてはいけません(そうするとコピペと同じ結果になってしまう)。
なお、元のテキストフレームにはない余白が付いていますが、これを解消する方法が見つかっていないので気にしないでください。あとで説明します。
作業手順は以上です。え? コピペの方が楽? いやいや、CCライブラリからリンク配置を使うのはここから先がキモなんですよ。
手順3 修正
さて、この表を修正したい、ということになりました。コピペの場合は、Illustrator上で修正するか、InDesignに戻って修正して再度コピペするかなんですが、この場合は違います。
まず配置したオブジェクトを選択します。するとコントロールバーに「オリジナルを編集」というボタンが現れますので、そこをクリック。(もしくはメニューの[編集]-[オリジナルを編集])
するとどうでしょう。InDesignが起動して編集できるように開いているではありませんか。
これを編集して、そのまま閉じると(保存するか聞かれるので[はい])、Illustratorに戻ったら直っている! なんて素晴らしい!
さて、この仕組みについて、わかっている限りで書いておきます。
InDesignでCCライブラリに登録したものは、実はInDesignのスニペット(idms)形式になります。さらに、登録と同時に裏でPDFファイルが作成されています。ここがこの仕組みの重要なところです。作成されたスニペットとPDFはAdobeのサーバーにアップロードされるのですが、同時にローカルにも保存されます。
Windowsの場合の保存先 C:\Users\[username]\AppData\Roaming\Adobe\Creative Cloud Libraries\LIBS Macの場合の保存先 /Users/[username]/Libraries/Application Support/Adobe/Creative Cloud Libraries/LIBS
CCライブラリからIllustratorに配置すると、PDFファイルが配置されます。リンク先はローカルに保存されたPDFファイルになり、パッケージを行うと、このPDFファイルが収集されます。なので、普通にPDFファイルをリンク配置しているのと同じことになります。また、埋め込みを行うと、PDFファイルが解析されてIllustratorのオブジェクトになります。グループ解除・クリッピングマスク解除をして、普通に編集できます。これはInDesignからコピペで持ってきたオブジェクトと同じ状態と言えます。ですので従来、PDFを配置したり、InDesignからコピペで持ってきて問題がないよという場合であれば大きな問題は発生しないような気がします(過信は禁物です!)。
さて、「オリジナルを編集」では、PDFファイルは使われずに、スニペットが使われます。CCライブラリパネルでの表示でInDesignで作成したものであるという印が見えるように、リンク情報として内部的にスニペットファイルの情報を持っているのでしょう。InDesignを起動し、新規ファイルを作成してスニペットが読み込まれます。
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ここで注意点があります。
- 起動するInDesignのバージョンは、idmsファイルに関連付けられているバージョン
- 作成されるドキュメントの大きさはInDesignの既定の設定値と思われる
なので、バージョンによっては文字組が変わったり、既定の用紙サイズが小さすぎてスニペットが配置できない、という状況が起こるかもしれません。ここは更に検証が必要です。
また、どのような理由か分かりませんが修正したスニペット(およびPDF)は、ローカルの保存場所では別名で保存されます。ですから修正するごとにCCライブラリパネルに表示されないゴミファイルが2つずつ増えていくので厄介です。
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もう1つ解明できていない重要なことがあります。それはPDFファイルがどのような設定に基づいて作成されるのかということです。
作成されたPDFファイルのプロパティを見ると
のようにInDesign CC2019のPDF Libraryを使って作成されているんですが、私のPDF書き出しの設定では、「PDFのバージョン:1.7」「タグ付きPDF:はい」「Web表示用に最適化:はい」にならなければなりません。
また、ドキュメントサイズや裁ち落としの設定などをどんなにいじっても、テキストフレーム外の余白を変更することはできませんでした。スニペットに余白という概念はないので、スニペットからPDFを自動作成する際に勝手に余白が付けられるわけですが、その由来が分かりません。
つまり、どの変換設定を使用してPDFファイルを作成しているのかは全く未知の状態です。
ということで不明な点もいくつかあるのですが、Illustratorの新しいワークフローが見えてきました。
私は「そうするぐらいなら最初からInDesignで全部作るわい(というか明らかにIllustrator案件でもInDesignで作った方が楽な人)」なので非常に申し訳ないんですが。
ただ、日本の現状ではInDesign案件でも無理矢理Illustratorで作ってる人がかなりいるようなので、そういう人たちの中でIllustratorで表の作成に悩んでいる方は是非、この新しいワークフローを研究して欲しいと思います。(そしてInDesignも使ってみてね)
Adobeさんも、CCライブラリでこんなに便利になりますってセミナーをたまにやってましたが、実際に役立つのはこういった既存の作業を楽にする方法じゃないのかな。これを知ればCS6で止まってる人たちがCCに乗り換えやすくなるかもしれないし。ここで挙げた懸念を払拭した上でどんどん紹介すればいいのになあ、と思ったりします。(I本さん、ごめんなさい、また文句言いました)
11月16日 追記
これ、Photoshopでも同様に配置・再編集できます。また、XDでは「非対応のエレメント」となっていて配置できません(バージョン13.1時点)。