InDesignに生成AIがやってくる!(来ないかもしれない)
本題の前に。3月12日ごろからInDesign 2023(最新より1つ前のバージョン)にセキュリティアップデート(18.5.2)が来ています。修正内容はおそらく4月10日のセキュリティ情報で分かると思います。そんなに急ぐ話でもないと思うので(急ぐのであれば3月13日のセキュリティ情報で出ているはず)内容を確認して、必要であればアップデートしましょう。なお私は、「バージョン18.4以降のPDF書き出しを使用すると、作成したPDFファイルを印刷する際に白紙になったりする問題」(何回も取り上げているので飽きているかもしれませんが)が解消されていないので、18.3のままです。
さて本題。私はInDesignのユーザーガイドをよく見ます。というのもAdobeコミュニティフォーラムで回答するために公式の情報を提示したいからです。先日もテンキーがショートカットに使えないという質問があったのでどこかに説明したページがなかったかなあ、とユーザーガイドを探しておりました。すると次の記述が。
「生成 AI(アメリカ合衆国でのみ利用可能)」の見出しがあり、さらに「テキストから画像生成(Beta)」の項目があるじゃないですか。リンク先は英語版のユーザーガイドの同じ項目(Text to Image (Beta))になっています。
詳しくはがんばって英語ページを読んで欲しいんですが、かいつまんで言うとこうです(私の英語の理解が間違っていたらすみません)。
Adobe Fireflyの機能を使用してテキストから画像を生成します。この機能は現在InDesignベータ版で提供されています。ただし、現時点で使用できるのはアメリカ合衆国で英語版を使用しているユーザーに限定されています。
操作方法には2通りあります。
「Text to Image」パネルを使用
専用のパネルが用意されており、その中で操作します。まずテキスト(プロンプト)を入力し、次いで画像の種類(「Photo」と「Art」のどちらか)生成する画像のサイズ比(「16:9」など)を選びます。「Generate」ボタンをクリックすると3つの画像が生成されるので、どれかをドキュメントに配置されます。(配置するときの操作方法はちょっとわかりません。事前にフレームを選択しておくと、そのフレーム内にフィットされるようです)
コンテキストタスクバーを使用
PhotoshopやIllustratorと同じくコンテキストタスクバーが表示されるようです。長方形ツールなどで図形を作成したときに表示されるようですが、既存の図形を選択した状態で表示されるかは書いてないです。
あと、この機能についてのフィードバックを求めています。フィードバック先はおなじみ、UserVoiceです。
文書の日付からすると、この機能は今月になってから提供されているようですね。現時点ではアメリカ合衆国の英語版ユーザー限定ということです。ベータ版を使うためには使用状況をAdobeに提供しないといけないので(こちらのページで提供を許可)AdobeIDとInDesignのロケールから判断しているんでしょうか。もしかするとIPアドレスも使っていたり契約先情報(本国契約もしくはアイルランド法人契約)も使っているのかもしれません。
英語版限定ということで、プロンプトも英語に限られているかもしれません。記述はありませんが。
フィードバック先のURLですが、これは以前クラウドドキュメント用に使っていたものですね。クラウドドキュメントに関するフィードバックがごっそり消えて「Text to Image in InDesign Beta app」に切り替わってます。
余談ですがクラウドドキュメントは未だベータ版から抜け出せずにいます。要因と思われる大きなところは次のものです。
- InCopyワークフローに対応していない
- パッケージ機能がない
特に「パッケージ機能がない」というのはフィードバックの中でも投票を集めていたと思うんですが、全然見れなくなっています。
クラウドドキュメントがこういう状態なので「Text to Image」もいつ実装されるのか全く分かりません。クラウドドキュメントと違って大きな障害はなさそうですけどね。
さてこの「Text to Image」機能、私は大いに期待しています。やりたいことは次の2つ。
- デモ用サンプルのダミー画像の生成
- 広報誌などでよく使われる埋め草
ダミー画像の方は使う人は限られていると思うんですが、埋め草の方は広報誌を扱う人はほとんどの方が必要としているのではないかと思います。昔はイラスト集から季節の行事や花のイラストを選んでコピーして版下に貼る、デジタル化したら「具満タン」とかのメディア媒体から探して、あるいは「イラストAC」などのサイトから探して加工・配置するということをするわけです。この探すという行為が面倒くさくてお金ももらえないしということで、困っている人も多いんじゃないかと思います。
それが、テキストを入力するだけで埋め草が作成できるのであれば、探さなくてもよくなります。ただし懸念点があります。
1つは、思い通りの画像を生成するのに結構時間がかかること。これはすでにPhotoshopやIllustratorでテストしている人にはお分りでしょうが、最初のうちはなかなかいうことを聞いてくれません。最も適切なプロンプトにたどり着くまでかなり試行錯誤します。
2つ目は実際に使える形式の画像を生成できるのか、という問題。形式というのはモノクロ2値あるいはグレースケールで、InDesign上で着色できること。ユーザーガイドの画像ではカテゴリが「Photo」の状態になっており「Art」ではどうなっているのかわかりません。「Art」できちんとした線画(Line Art)も生成されるのであればよいのですが(それでもRGBだと論外)。
最後に私からの希望です。
実は現在のベータ版の機能では、これをInDesignに搭載する意味はそれほど大きくありません。つまり、現行のInDesignでも「Adobe Fireflyで画像を生成→ローカルに保存→InDesignに配置」という手順で実行できるからです。今回のベータ版は、それをInDesign内部から実行できるようにしただけです。それはそれで一つの進歩なのですが、それではInDesignを活かしていません。
InDesignは出版のための編集レイアウトソフトです。PhotoshopやIllustratorと決定的に違うのは「ほぼ例外なくテキストが存在する」ということです。そこで画像を生成するということは、何かしらテキストと関連がある画像に決まっているんです。挿絵でも埋め草でもそうです。完全なイメージ画像といっても、テキスト(文章)から醸し出す雰囲気を伝えるものです。ということで、「InDesign上で入力されているテキストの一部を選択したらそれがプロンプトになる」という挙動は自然、そして必然の流れです。
しかし現状はAdobe Fireflyをそのまま持ってきて隣に置いているだけで、InDesignと一体化していない(InDesignを活かしていない)わけです。時間はかかるかもしれませんが、いずれはプロンプトを入力することなく文章に合わせた画像が生成されるといいですね。(たとえば「勉強会を開催します」という記事があったらパーティ券の画像が生成されたり「近畿ブロック会議を開催します」という記事があればダンサーの画像が生成されたりするものです)
あと、かなり個人的な希望ですがスクリプトで扱えると大変ありがたいです。たとえばExtendScriptでQRコードを生成するには、次の命令文を書きます。
Document.createPlainTextQRCode([plainText], [qrCodeSwatch], [withProperties])
これに合わせて次のような感じで使えるとありがたいです。
Document.createFireflyImage("Line Art", Array(prompt) or selection, [swatch], [withProperties])
使う場面としてはカタログや情報誌のダミーレイアウトですね。Adobeさん、よろしくお願いします。