InDesign 20.3.1が来ています。差分いろいろ
やはりAdobe MAX London 2025に合わせて色々アップデートが来ましたね。概要についてはAdobeブログを見てください。
Adobe MAX London:よりパワフルになったAdobe Creative Cloud、新しいAdobe Firefly AIツール、AI時代のクリエイターのサポート
私は4月24日の20時くらいにアップデートが来たのを確認しました。Xではかたやなぎさんが18:02にポストしていますので、大体その時間に一斉に来たものと思います。
そして、まだInDesign 20.3をインストールできずにいた、4月30日の23時ごろ、InDesign 20.3.1アップデートが来ました。

ちょっと不意打ちをくらわされましたが、こうなってしまった以上20.3はインストールせず、20.3.1をインストールするのは当然ですね。ですから、20.3と20.3.1をまとめて見てみましょう。
日本語版20.3の新機能は「数式機能」のみ
バージョン20.0で追加された数式機能ですが、当初は「MathML直接書いてね」というトンデモ仕様でしたが、パネルから目的の記号をクリックすることで入力できるようにインターフェイスが改善されたということです。新機能はこれだけです。
ただ、改善されたからといって、使えるものになったわけではありません。まず出力形式がSVGであること。SVGフォーマットということは画像モードがRGBなので、そのまま印刷物には使えない代物となります。特定のカラーに対してCMYK情報を付与することはできるようです(InDesignでは実装されていなさそう)が、特色(Spot Color)は使用できないみたいですね。学参物の場合2色刷も結構あるので、そこはどうにかしてほしいです。いちいちIllustratorで開いて着色し直しますか?
聞くところによると、数式編集パネル内で指定した文字サイズとInDesign本体での文字サイズが異なるらしいです。本文の文字サイズと合わせるためには、数式編集パネル内でどう文字サイスを指定すればよいのかわからないので困るらしいです。
20.3および20.3.1で修正された問題
5月5日17:30現在、20.3で修正された問題は日本語情報がありますが、20.3.1で修正された問題は英語情報しかありません。主に特定の環境でクラッシュする問題の解決といった内容で、特に気にするものはないかなと思います。
あと、記載がないのですが「段落の囲み罫と背景色」パネルで、文言の変更がありますね。実は「間隔の色かぶり補正」っていう不思議な名称はこの機能が搭載されたCC2018当時からこうなってたんですね。一方、ユーザーガイド(更新日:2023年10月20日)では「間隔の濃淡」になっていて、ユーザーガイドは正しい翻訳なのに実装がおかしいという状態だったというわけです。今回めでたく実装の翻訳が正しくなったということですね。ユーザーガイドの図版は古いバージョンのものなのでそのうち直るでしょう。


この変更により、パネルのサイズも少し小さくなっています。
キーボードショートカット編集内のメニュー項目がおかしい & 新機能のチラ見せ?
キーボードショートカット編集ダイアログ内のパネルメニューの項目に変更があります。実はこれ、2024(19.0.0)からおかしかったんですが、少し直っています。


部分的に直ったのは私がプレリリースで報告したからなんですが、まだおかしいところが残っています。
それはまあいいんですが(本当はよくない)、それよりも、まだ実装されていない項目が先に載っちゃっています。まだ日本語訳がされていないので実装途中だということが分かるんですが、開発チーム的にはOKなんですかね?

私としては、InDesignの解説書等を出す方、あるいは指導者に向けて、「Content Editing」パネルはまだ実装されていないので記載しないで、という注意喚起をしなくてはいけません(どんな立場やねん)ので、あえてここに掲載します。(ちなみにどんな機能なのかという予測はつきますが、NDAなので話せません)
20.2でDOMの追加がありました。20.3は変更なしです
スクリプト/プラグイン開発者向けの案内になりますが、実は20.2でDOMの追加が1つだけありました(20.0での追加についてはこちら)。私のオブジェクトモデル図は19.5から更新していないのですが、MathObject以外は微細な変更なので急ぐ必要もないかなと思っています。MathObjectは実装がおかしいので、私の方では当面取り扱わずにおこうかと思っています。使いたい人はこちらへ。
20.2で追加されたのは、ClipboardPreferenceオブジェクトのshowAutoStyleOptionです。これは環境設定の「クリップボードの処理」内にある「スタイルを自動設定オプションを表示」のところです。
え? そんな項目はない? そうです! これは「テキストのスタイルの自動設定」という機能なんですが、ユーザーガイドの注意書きにあるように日本語版では実装されていません! でもなぜかユーザーガイドには説明があるという(あんまり考えずに自動翻訳したのがバレバレ)。
そんなわけで、日本語版では使えないはずです(試してないけど)。
また、20.3のオブジェクトモデルも存在しますが、実は20.2と何も変わっていません。じゃあ作るなよ、と言いたいところです。
今回は20.3の直後に20.3.1が出たこと、キーボードショートカット編集のメニュー項目の件、不要なDOMの作成など、いつものInDesignチームらしくない(ちょっとIllustratorチームっぽい)動きになっているのが気になります。イベント間に合わせのためにこうなったのか、あるいは異動とかあって体質が変わりつつあるのか、その辺は注意深く見ていく必要がありますね。
また、今回のように、表面上の新機能はなくても、その準備のために内部的にいろいろいじっていることが分かります。ですから常に、仕事では最新版を使わないことをお勧めします。
5月6日 追記
今のところUserVoiceでの20.3.1の不具合らしき報告は1件だけですが、これは個別の環境の問題かもしれません。
新機能について「数式機能のみ」と書きましたが、これは日本語版に限った話で、英語版にはもう2つ新機能があります。長くなりそうなので別記事を起します。