InDesign 2025の奇妙で重大な修正プログラム(hotfix)が出ている
InDesignの奇妙なアップデートが出ています。奇妙というのは、各マイナーバージョンごとにアップデートが出ているということです。
| マイナー バージョン |
パッチ バージョン |
今回のホット フィックス |
|---|---|---|
| 20.0 | 20.0.1 | 20.0.2 |
| 20.1 | ― | 20.1.1 |
| 20.2 | ― | 20.2.1 |
| 20.3 | 20.3.1 | 20.3.2 |
| 20.4 | 20.4.1 | 20.4.2 |
| 20.5 | ― | ― |
この修正プログラムについてはAdobeコミュニティフォーラムの次のトピックに記載されています。
Critical InDesign Hotfix Available – Update Your InDesign to Ensure Continued Feature Access
We are making important updates to how certain features in Adobe InDesign are supported. Without the update, certain features may not function as intended in some versions. To ensure a smooth and uninterrupted experience, we have released critical hotfix updates for the impacted InDesign versions.
Google翻訳
Adobe InDesignの一部機能のサポートについて重要な更新を行っています。更新を行わないと、一部のバージョンで一部の機能が意図したとおりに動作しない可能性があります。スムーズで中断のないエクスペリエンスを確保するため、影響を受けるInDesignバージョン向けに重要なホットフィックスアップデートをリリースしました。
これだけでは何を修正したのか全く分かりません。当然質問が来ますので次のように返信されています。
To clarify, the hotfix is not just a bug patch but an important update to ensure that all current features in InDesign continue to function properly moving forward. Some underlying platform changes mean that without the hotfix, certain features may not behave as expected in older versions.
So while the wording might feel like a mix of 'critical' and 'hotfix', the key point is that installing it makes sure your version stays stable and fully functional. If you're already on the latest major release, you're covered, but if you're on one of the impacted versions, applying the hotfix will prevent any interruptions.
Google翻訳。ただし、太字部分は私の意訳
このホットフィックスは単なるバグ修正プログラムではなく、InDesignの現在のすべての機能が今後も正常に動作し続けることを保証するための重要なアップデートです。基盤となるプラットフォームの変更により、ホットフィックスを適用しないと、以前のバージョンで特定の機能が期待どおりに動作しない可能性があります。
「緊急」と「ホットフィックス」という言葉が混ざっているように聞こえるかもしれませんが、重要なのは、このホットフィックスをインストールすることで、お使いのバージョンが安定し、完全に機能し続けるということです。既に20.5を使用している場合は修正が含まれていますが、それより前のバージョンをご利用の場合は、ホットフィックスを適用することで中断を防ぐことができます。
ほかにも質問がありますが、最終的な回答はピン止めされているものです。
We're sorry if the messaging caused any confusion. We’ve recently updated our apps to align with enhancements made to our backend infrastructure, which manages the visibility of certain features within the app. These updates were essential to ensure a seamless and reliable experience.
Google翻訳
メッセージの内容で混乱を招いてしまい申し訳ございません。アプリ内の特定機能の表示を管理するバックエンドインフラストラクチャの強化に伴い、アプリも最近アップデートいたしました。これらのアップデートは、シームレスで信頼性の高いエクスペリエンスを実現するために不可欠なものでした。
どうやら「backend infrastructure, which manages the visibility of certain features」つまり「特定機能の表示を管理するバックエンドインフラストラクチャ」というものがあり、それがバージョンアップ(もしくは変更)されることによるものということのようです。
「バックエンドインフラストラクチャ」は長くて呼びにくいので以下「裏方インフラ」と呼びます。適切な日本語がなさそうなので、造語とわかる形で無理やり作りました(笑)
このアップデートについていくつか気になる点があります。
どうして各マイナーバージョンごとにアップデートが出たの?
これは、InDesign 2023のことを思い出せばすぐに理解できます。このバージョンでは、18.4以降において「書き出したPDFを印刷すると白紙になる」というバグが存在するため、私を筆頭に多くの人が18.3で止めていると思います。ですから、今後2025で致命的なバグが発覚し最終バージョンではない途中のところでアップデートを止めることがあっても引き続きサポートが必要という判断でしょう。
もうすぐ(10月28日がAdobe MAX初日なので、それに合わせて)2026バージョンが出ると思われます。2025バージョンはその日以降、セキュリティアップデートしか行われない見込みですが、メンテナンスは行われます。このメンテナンスを行う際に、古い状態の裏方インフラだと問題があるのでしょう。
2024以前はどうなの?
ここでは、この問題は2024バージョンやそれ以前のバージョンについては言及されていませんので、2024以前はどうなのかはわかりません。2023以前はサポートが終了しているので今更修正することはないでしょう。
2024について言えば、こっそり修正(19.5.5に含まれているか19.5.6に含まれる予定)の可能性はあります(こちらでこっそり修正の可能性について言及しています)が、もうすぐ提供が終わることから、これ以上修正を入れることはないという判断もあり得ます。
どんな修正なの?
「特定機能の表示を管理するバックエンドインフラストラクチャ」ということから、アプリケーションフォルダ内をざっと眺めましたが、それらしいものは見つかっていません。
「特定機能の表示」というと、たとえば数式機能ですが、これを表示するために裏方インフラとしてMathJaxという無償のプログラムが使われています。MathJaxはWeb用の数式機能なので、SVG(つまりRGBカラーモード)でデータを作成して表示します。これが印刷に向かないので使えないと何回か書いていますが、裏方インフラとはそういうもののことですね。
もしかするとMathJaxのアップデートでEPSに対応した、もしくはMathJaxの代わりにEPSに対応した数式プログラムを入れたとかなら非常に嬉しかったんですが、そんな気配はなさそうです。
InDesignでは他にもいろいろなプログラムを利用しています。たとえばHTMLを埋め込んだりQRコードを作成することができますが、これらをInDesign開発チームがいちから作成することはありません。既存のプログラムがあればそれを利用するのが速くて楽ですから、この機能もどこかが作成したものを利用していると考えられます。しかし、MathJaxのようにユーザーから見える形ではなく、ファイルの中に埋め込まれていたりするので、ユーザーが特定するのは困難です。
なぜCritical(緊急)なの?
ここが最大の謎です。どの程度の緊急性かもわかりません。2026のリリースまでにアップデートしておいてね、ということであるならば、そこまで緊急とは思えないのですが。もしかすると開発チームではすべての開発機で裏方インフラのアップデートを行ってしまった、もしくはすぐにアップデートする予定のため、古い裏方インフラをサポートしたくないのかもしれません。当然もう2026の開発は始まっているでしょうから。
これは完全な憶測なのですが、ピン止めされた最終回答が出るまではライセンス交渉の決裂の危機だったということも考えました。上に書いたようにInDesignは内部でいろいろなプログラムを使用していますから、その中には有償のライセンス契約も含まれていると考えられます。過去にはPantoneとのライセンス契約が決裂し、基本的な色以外のものが使えなくなってしまったということもありますし、東洋インキのコレクションも使えなくなりましたし。また「非認定バージョン」や、同時に2年縛りになったのはDolbyとのライセンス契約が決裂したとの噂もありました。今回のCriticalも、どこかとのライセンス交渉が決裂してそのプログラムが使えなくなって、急いで代わりのものに差し替えなくちゃいけない(そうしないとInDesign自体が使えなくなる)ということかも、と思ったのです。
ピン止めされた最終回答からするとそのような懸念は不要のようです。ただ、過去にライセンス交渉の決裂でユーザーが不利益を被るということが幾度となくあった会社ですから、私はこれからもそういうことが起こり得ると思って付き合っています。
ちょっと雑談が過ぎましたが、2025のアップデートを途中で止める事態になれば、今回のホットフィックスを適用したバージョンで止めておく、ということです。
(普段は記事内の事象には自分の過去記事や関連記事のリンクを張っているのですが、今回は省略します。申し訳ないですが必要であれば検索してください)