InDsign 18.0(2023)でテキストの回り込みが意図通り機能するようになりました
InDsign 18.0(2023)で環境設定の[組版]に追加された「テキストの回り込みに加え、テキストインデントを維持」についての解説です。
これは何をするものかというと、テキストの回り込みが発生した際の挙動を変更するものです。初期状態ではチェックが入っていて、その場合に回り込みがあると次の図のように、字下げや箇条書きの場合のインデントが維持されます。
このチェックをオフにすると次のようになり、字下げや箇条書きのインデントの設定が無視されてしまいます。
実はこのオフのときの挙動は、InDesign 14.0(CC2019)までの挙動です。
この挙動は当然ユーザーから不評でして、それを解消しようと、InDesign 15.0で修正が入ったのですが、開発チームの理解不足から状況を悪化させることになりました。さらに悪いことに、これがサイレント修正だったので、私もかなり強い口調でクレームを入れたという経緯があります。
あれから3年。ついに「まともな」回り込みが実現したよということです。時間はかかったけれど、忘れずに修正を入れてくれた開発チームに感謝します。この調子でフレームグリッドにおける段落の囲み罫と背景色も解決してね(詳しくは2つ前の記事)。
さて気になるのは「新しく作成するのはいいけれど、過去のデータはどうなの?」という点です。
実はこの環境設定はドキュメント依存で、過去のデータを開いたときにはチェックがオフになっています。そのため、オンにするまでは以前の体裁が維持され、バージョン15で発生していた「勝手に体裁が変わる」問題は発生しません。InDesignチームは学習能力が高い!
14.0で作成したデータが残ってたので、それを開いてみると次のような状態です。
ここで「テキストの回り込みに加え、テキストインデントを維持」のチェックをオンにします。
このようにリフローされます。ですから過去データを扱うときは基本的にオフのままで使用してください。
今さらなんですが、このデータを15.0~17.0で開いて挙動を確認しました。
14.0→15.0(2020)の場合
開いた直後は14.0の体裁を維持しています。
ただし、文字編集を行うとリフローが発生し、字下げを設定した部分の体裁が変わります(箇条書きは変更なし)。これは危険。
14.0→16.0(2021)の場合
実は16.0から挙動が変わってて(気づいてなかった)、14.0での体裁が維持されています。というか14.0以前の挙動に戻ってた。
14.0→17.0(2022)の場合
16.0と同様、14.0の挙動のままです。
今度は15.0(2020)でリフロー後の状態のデータをそれぞれのバージョンで開いてみます。
15.0→16.0(2021)の場合
開いた直後は15.0でリフローした状態が維持されています。
追加した「あ」の文字を削除すると2字下げのところが、1行目だけ2字下げになってしまいます。
1行目に文字を追加すると、1行目もリフローして14.0の状態に戻ります。ちょっと怪しげな挙動ですね。
15.0→17.0(2022)の場合
これは「15.0→16.0(2021)の場合」と同じ挙動でした。うーん。
では最後に、15.0でリフローしたもの、16.0で再度リフローしたものを18.0で開いてみます。
15.0→18.0(2023)の場合
開いた直後の状態は15.0での体裁を維持しています。
文字の追加や削除を行うと14.0の状態に戻ります。これは16.0および17.0と同じ挙動です。
そして環境設定の「テキストの回り込みに加え、テキストインデントを維持」のチェックをオンにすると体裁が変わります。
16.0→18.0(2023)の場合
開いた直後は体裁が維持され、文字の追加削除を行っても変化はありませんでした。つまり14.0の状態を維持しているということです。
環境設定の「テキストの回り込みに加え、テキストインデントを維持」のチェックをオンにすると体裁が変わります。
検証結果は以上になります。
15.0で中途半端な実装をしてしまったせいで、そのバージョンを経ている場合は要注意ですが、それ以外は「テキストの回り込みに加え、テキストインデントを維持」のチェックを触らないようにすれば過去データの修正には問題ないと思います。
もちろん新しく作成する場合はチェックをオンのままにして、回り込みがあってもちゃんと字下げしてくれる方がいいに決まってます。やっとこういうデザインも苦労しなくなったので。
追記
今回確認したInDesignの正確なバージョンは次の通りです。
14.0→14.0.3
15.0→15.1.4
16.0→16.4.3
17.0→17.4
18.0→18.0
分かりにくくてすみません。