私はIllustrator 2025を使用禁止バージョンとします(2026で修正される見込みのバグリスト付き)
昨日(10月15日)、月例のAdobeのセキュリティ情報が出ました。公開日が決まっているのだから日本語版も同時に出したらいいのにと思うのですが、相変わらず英語だけの案内です。日本語版もそのうち(1か月以内)更新されるんでしょう。
今回のセキュリティ情報はDTP関連でいえばIllustratorとBridgeの情報があります。Bridgeは私はインストールしていないのでIllustratorだけ話をします。
Illustratorでは29.8と28.7.10に同じ修正が入っています。29.8はリリースされなかったので9月9日にリリースされた29.8.1で修正が入っているということになります。28.7.10は9月16日ごろにリリースされました。リリースから1か月たちましたが、このセキュリティ修正に伴う不具合は報告されていません。
結論
さてこれから本題です。現在、サポート対象なのは2024と2025ですが、10月28日(日本時間では29日)には2026(バージョン30)が登場して2024はインストールできなくなる見込みです。そこで、どのバージョンを使用するのかということが問題になってきます。1か月前にも書きましたけれど、この1か月の間に起きた出来事を振り返って最終判断をする時期に来ています。
まず2024については、28.7.10が最終バージョンになるでしょう。このバージョンの不具合報告を見ていないので、重大な問題はないと考えます。ですからこのアップデートは必ず適用してバックアップしておきましょう。そして普段遣いにしましょう。現在2023以前を普段遣いにしている人も2024(28.7.10)をインストールしておきましょう。これが現時点で最も安定しているバージョンになるからです。
2025は残念ながらどのバージョンも使えません。1か月前の記事で2026が出たあとでも2025のアップデートが出る可能性について言及しましたが、たとえそのアップデートが出ても現状懸念されているバグがすべて解消される見込みはありません。理由は後述しますが、史上最も使えなかったバージョンと言われても仕方のない状況です。もしすでに2025を普段遣いにしてしまったのであれば、現在使用中のバージョンを維持しつつ(アップデートはしない)2026をテストすることをお勧めします。2026では、2025で発生しているバグが少しずつ修正されていくものと思われます。
29.8.2について
10月1日にバージョン29.8.2が出て、29.8.1で発生していた、フォントが変更され体裁が変わるというバグは解消しました。また、29.5で発生していたフォントが変更されるバグも解消されています。フォントに関する問題はこれでほぼ解消されたものと思われます。ただし29.3.1で発生していると思われるフォント化けについては記載がありません(含まれているのかもしれませんが)ので、ごくまれに発生する懸念は残されています。
29.8.2では新機能も追加されています。この正式なアナウンスはありません(おそらく2026の新機能として記載されるのでしょう)のでDTP Transitの記事を見てください。
私が観測した範囲では次の文言に変更があります。
- 環境設定→一般の最初の項目が「キー入力」から「キー増加」に変更
- 新規ドキュメントダイアログ(新)の「詳細を表示」が「すべてを表示」に変更

他にも文言の変更がある可能性があります。Illustratorには文言の変更をアナウンスする仕組みがないので自力で探さなければなりません。(メニュー項目についてはしたたか企画さんが追っかけているので助かります)
29.8.2で修正されたバグの情報はフォントの件以外はアナウンスされていません。どうやら今、Adobeがヘルプページの再構成を行っているようで、混乱状態にあります。
なお、前回の記事で言及した「前回PDF形式で保存した場合に、次に保存するときの初期値がPDF形式になる」問題、ベータ版30.0で修正されていると書きましたが、これは再検討されるようです。29.8.2では実装されていません。
2025が使えない理由
29.8.2によって最大の問題は解消しました。しかしこの間、アドビサポートは29.2.1(または28.7.9)まで戻すようアナウンスし、多くの人(特にmacOS 15.4以降を使用していた人)はこれに従ったものと思われます(前の記事で書いたように大々的なニュースになってしまいましたから)。余談ですが、このアナウンス内では中嶋さんがアップデートの心構えについて語っておられます。これをまとめた記事も出していらっしゃるのでぜひ読んでください。
そして、29.8.2で解消したことがアナウンスされたことによってそれらの人は29.8.2にアップデートしたのではないかと思います。
そこで思わぬことが発覚します。多くの人がアップデートを停止したため、28.5以降のバグが発見されづらくなっていたということです。コミュニティフォーラムでは次のような投稿です。
2番目の投稿は複数のおかしな挙動を挙げているのですが、そのうち最初のもの「カラーパレットにCMYKの濃度数値を打ち込む際、タブで順次送っていくと2つ目で入力が無効になって表示が消える」はhamkoさんのところでも発生しているとのことで、個別の環境ではなさそうです(私のところでは発生していません)。なお、この投稿は発生状況が分からないので誰も検証できず放置されています。
このように、大きなバグが発生してユーザーがアップデートを停止してしまうと、それ以外のバグが発見されず、問題は解消されないという悪循環に陥ってしまいました。
それゆえに、「2026が出たあとに2025のアップデートが出る」としても、そもそもまだ発見されていないバグが残っている可能性が高いと思います。ですから、現時点でもうすでに、2025は最初から最後まで使えないだろうと考えています。
既知のバグについてはものかのさんの「Illustratorバグのメモ」がまとまっています。このうち「リンクパネルの拡大・縮小の%が「72ppi換算」になる」についてはコミュニティフォーラムでやもさんから回避策が提示されていますのでそちらも参考にしてください。
30.0で修正される見込みのバグ
UserVoiceに投稿されたバグ報告のうち、次のものがベータ版30.0で修正されています(もしかすると29.8.2で修正されている可能性もあります)。数が多いので翻訳&29.8.2での確認は行っていません。これらで困っている方は2026を待ちましょう。「2026が出たあとに2025のアップデートが出る」ことに期待しないでください。通常は出ないのですから。
- Hyperlinks made in Attributes not working on final file, even when saving with "Preserve Hyperlinks"
- Illustrator no longer keeping custom layer colors. Layer colors revert to black
- New fonts don't load upon installation
- Illustrator 29.8.1 stopped working with Extensis Connect. Activated fonts don't show up.
- Real Time Drawing & Editing will not turn off for drawing shapes
- Moving a part of a blend with any Selection tool makes it move faster than expected
- Pattern Scale Not Working
- GPU Preview glitches with clipping masks and transparency (since Illustrator 29.6.0), white rectangle appears below
なお、今後増える可能性もあります。次のリンクはUserVoiceで[完了(ベータ版)]のフラグがついたものを新しい順に並べたリストになります。新しくフラグがついたものはここで挙げたものの上位に来ますので、ときどきこれをクリックするとよいです。