Illustratorで、シェイプに変換/シェイプを拡張とは何ですか
「シェイプ」は正式には「ライブシェイプ」といいます。
Illustratorは元々、ペンツールでクリックした点を結んで図形を作成する道具でした。作成した図形を変形したいときはダイレクト選択ツールでアンカーポイントを移動したりしていました。このような図形のことをIllustratorでは「パス」といいます。
図形を描くときに、全てペンツールで行うのは不便ですので、長方形や楕円など基本的な図形は専用のツールがあります。しかし古いバージョンではこれは「パス」です。まだ「シェイプ」という概念は持っていませんでした。バージョンが上がるにつれ、これらで描いた図形は「シェイプ」として扱われるようになりました。最近では星形ツール(スターツール)があります。これはバージョン28.3(今年の3月)から「シェイプ」になりました。それ以前のバージョンでは「パス」です。
では、パスとシェイプの違いは何か、ということですが、おおざっぱには次のように言えます。
- 作成後にパラメータを変更して変形できるのがシェイプ
- 作成後にダイレクト選択ツールを使用して変形するのがパス
しかしIllustratorは複雑なアプリケーションなので、厳密に区別するのは難しいです。
一例として角丸長方形を挙げます。角丸長方形を作成するときは、一般に長方形ツールを使用して長方形を描き、「コーナーウィジェット」(4つの角の⦿の記号)で角を丸めると思います。コーナーウィジェットをもう一度動かすと角丸の大きさを変えられますよね。これがシェイプの特徴です。後から変形が効きます。
これを「シェイプを拡張」を行うと「パス」になります。パスになったものはもうコーナーウィジェットが出ません。(ただしこの場合ではダイレクト選択ツールに切り替えるとコーナーウィジェットが出るので、「パス」であってもコーナーは認識しているという、Illustratorの複雑さがわかります)
パスで角丸の大きさを変えたいときは、ダイレクト選択ツールで行うしかありません。ですから、特別な事情がない限り、シェイプで作成できるものはシェイプのまま扱うのがよいです。
また、、角丸長方形の1つの角をダイレクト選択ツールで選択し、Deleteキーで削除すると「シェイプを拡張」と表示されると思います(すぐ消えますので見逃さないように)。これはIllustrator側で自動的に「シェイプ」から「パス」へと変更されたということを表しています。
Microsoft Officeや花子など、主に事務系で使われるアプリケーションは、元々図形を組み合わせて描画することをメインとし、自由な曲線を描くためには別の手法を取ってきました。そのため、最初からパスとシェイプの境界が明確です。Affinityもアマチュア向けで出発しましたのでこちらのグループになります。
これに対してIllustratorは、元々PostScript言語を簡単に記述するためのツールで、パスから出発してシェイプとしての機能を増やしてきたため、パスとシェイプの境界があいまいでかなり複雑なことになってしまっています。それがIllustratorの重さの一因となっています。