Adobe SenseiがIllustratorでの自動レイアウトを実現できない理由
(この記事はDTP Advent Calendar 2018の5日目の記事です。他の人の記事も見てくださいね)
CC2019になってInDesignにもAdobe Senseiがやってきました。ひとつは画像の「内容を自動認識に応じて合わせる」。顔写真をいい感じに揃えてくれると助かるんですが試す機会がないので未検証です。もうひとつは「ドキュメント要素の変更に合わせてページ要素を調整(レイアウト調整)」なんですが、マージン・段組にしか対応できていないので、レイアウトグリッドでは破綻しているといっても過言ではないくらい。今後のバージョンアップに期待しましょう。
さて、ではこの先、自動レイアウト機能はやってくるのでしょうか。わかりません(←おぃ)。写真とテキストをまとめてドラッグ&ドロップしたら、画像の中からメインの画像を自動認識して、テキストの中からキャッチコピーや注意書きを自動認識して、それぞれ適切な位置に配置してくれる。そんなことができるといいですね。
その自動認識なんですが、以前のエントリでも書いたように、サブスクリプション契約をしている人はAdobe Senseiにデータを提供するかどうか、自分で決めることができます。Adobe ID作成時に訊かれたような気もするのですが、改めて確認しておきましょう。
Adobeのサイトでサインイン(ログイン)して、 [アカウント管理]→[プロフィール]→[プライバシー]と進んでください。次のような画面で、チェックが付いていれば送信されています。
多分下の方、機械学習のところがAdobe Senseiだと思います。
私はデザイナーではないので、必要なときは他人のを真似ることになります。端物に関しては樋口先生の『デザインのバリエーションや代案をくださいと言われてももう悩まない本。』が素晴らしいので、いつか、それを使おうと思っています(←まず仕事がない)。樋口先生の本を真似ることで、Adobe SenseiがHiguchi Senseiになれば、きっとよい自動レイアウトができるはず。そうか、仕事がなくても真似たデザインを作って学習させればいいのか(←今更気づく)。
前置きが長くなりましたが、この自動レイアウト、もし搭載されるとしたら間違いなくInDesignです。そして、Illustratorに搭載されることは現状では難しい、というのが本題です。
それは、レイアウトとは何か、を考えるとすぐにわかります。レイアウトというのは「紙の大きさに合わせて写真や文字を配置すること」ですね。紙の大きさというのは、InDesignではページサイズおよび見開きかどうかになります。Illustratorではアートボードの大きさになります。ですよね? 繰り返しますが、アートボードの大きさですよね?
勘のいいひとはもう分かったと思います。Adobe Senseiは収集したデータを見てこう思うはず。
日本語版デ、画像モードガCMYKノデータハ、マージンヲトッテモトッテモ大キク取リマス。シカモ、均等ダッタリ、右ト下ノマージンガ大キカッタリシマス。コレデハ傾向ヲツカメマセン。解析不能デス。
要するに、トリムマーク機能を使ってトンボを描いたって、それは図形に過ぎないんですよ。Illustratorはアートボードサイズがレイアウトの基準になっているので、それに従わないデータはノイズでしかないんです。
なお、画像モードCMYKを付けたのは、Webの人(RGB)はまあまあ「アートボードサイズ=Webページのサイズ」で作っているので、その場合は自動レイアウトができるかもしれません。
さてこの問題、面付・出力側の人からは以前から「アートボードサイズ=仕上がりサイズ」でと言っているんですが、なかなか声が届かないですね。
その元凶のひとつに、教育が実際の現場と乖離しているのではないか、と思うようになりました。というのも、先日から職業訓練校でIllustratorを教えているんですが、その教科書がアートボードの中にトリムマークを作成するように書いてあるんです。もちろん、このページは大きくバツ印を付けるよう指導するんですが、そんな風に習った若いデザイナーもかなりいるのかな、という気がします。
実は、日本のデザイナー・クリエイターは欧米よりもAIに対する期待が高いという調査があります(境さんのツイートのリンク先)。それだったらAIに正しい情報を提供するということにも注意を払ってほしいと思います。