Affinity Publisherで日本語処理(6)デフォルト設定は使ってはいけない

2019年08月11日

前回の続きです。今回は非常に大事なところ。Affinity Suiteの文字パネル・段落パネルのデフォルトはとんでもない値になっているものがあるので、必ず段落スタイルを作成して使うようにしましょう、という話です。


まず文字パネルからです。

①フォント

Windowsなので、デフォルトのフォントは「Arial Regular」になっています。これをこのまま使うと日本語部分は「Meiryo UI」が使われます。まあ、ここは普通変更するので問題ないでしょう。

②文字サイズ

デフォルト12ptです。Affinity Suiteは長さの単位にQを持っていないのですが、13Qであれば「3.25mm」と入力することができます。ただし表示は初期値では小数点以下は1桁しか表示されません(9.2ptになる)。これは表示だけの問題で、環境設定で変更できます。(コメントありがとうございました)

ここも普通は変更するので問題にはなりません。

③カーニング

文字が選択されていない状態では図のように括弧つきで表示されていますが、文字を選択すると「自動」と表示されます。この「自動」というのはメトリクスです。これではいけません。

このように「す。」などの場合に句点が食い込んでしまいます。ですから、ここは通常「0」にしなければいけません(もちろん、メトリクスを理解しているうえでの使用は問題ありません)。

④行送り

行送りは文字パネルと段落パネルにあるんですが、段落パネルの方が細かい設定ができるので、段落パネルの方で説明します。

⑤OpenType機能

OpenTypeフォントで該当機能を持っている場合、標準ONになる機能があります。それが「標準合字(一般的な合字/liga、InDesignでは欧文合字)」および「コンテキスト代替(前後関係に依存する字形/calt)」の2つです。

この挙動自体CSSと同じですので問題ではありません(CSS での OpenType 機能の構文)。

問題なのAffinity Suiteの現バージョンでの処理に問題があるということです。詳細はこの後書きますが、日本語と混在する場合OFFにしておいた方がよいでしょう。


Affinityソフトウェア(バージョ1.7.1)には、以下の条件で標準合字の後に隙間が出るという好ましくない結果になります。

  • OpenTypeフォントで標準合字に対応している→標準合字がデフォルトONになる
  • フレームテキストで「均等割付」にしている(最終行はどれでもよい)
  • 行中に欧文スペース(いわゆる半角スペース)がない、もしくは行末で吸収されている

図では源ノ明朝ですが、欧文OpenTypeでも同様です。どこにも欧文スペースなどのアキを吸収する文字がない場合に発生するようです。

Affinityフォーラムで報告されているので、いずれ修正されると思われます(部分的に修正されてしまいました。フォーラムに書き込まないといけないみたい)。ただ日本語と欧文と混在する環境ではかなりの割合で発生すると考えられます。まあ、混在環境では日本語ネイティブを主な対象にしているでしょうから、読みやすさを考えて最初かOFFにしておくのが望ましいと思いますが。


あと緑枠のところですが、この設定をどうしたらいいのか分かりません。フォントによってプルダウンのリストが異なるんですよねえ。

手持ちの日本語書体では次のような感じです。

フォント タイポグラフィスクリプト タイポグラフィ言語
MS 明朝 自動、ひらがな、ラテン文字、CJK漢字 自動
Windows付属の游明朝、小塚明朝、リュウミン、筑紫明朝 自動、デフォルト、ひらがな、キリル文字、ギリシア文字、ラテン文字、CJK漢字 自動、デフォルト
源ノ明朝 自動、デフォルト、ひらがな、キリル文字、ギリシア文字、ハングル、ラテン文字、CJK漢字 自動、デフォルト
貂明朝 自動、デフォルト、ひらがな、ラテン文字、CJK漢字 自動、デフォルト

いずれ調べなきゃいかんです。


段落パネルです。

④行送り

ここも括弧つきで表示されているので、自動で設定されている項目です。Affinityの場合はフォントによって異なります(今のところ理由は不明です)。そのため、フォントを変更すると行送りが変わるという、あり得ない状態になっています。いくつかのフォントで調べたところ

  • 行送1em
    MS 明朝、源ノ明朝、貂明朝
  • 行送1.5em
    Windows付属の游明朝
  • 行送2em
    小塚明朝、リュウミン、筑紫明朝

という結果です。ですから、ここは必ず値を指定しなければなりません。

この設定は文字パネルと段落パネルで異なっているので注意が必要です。文字パネルの方は固定値しか表示されませんが、段落パネルでは固定値以外の設定(たとえ175%とか)も可能です。

複数」というのは、選択範囲が複数の段落の時の表示のような気がしますが、なぜか指定できます。詳細は不明です。

⑥段落後のアキ量

日本語組版の場合、普通0です。初めて使う人が必ずはまる罠になってます。


なお、ベースライングリッドONになっていますが、ドキュメントのベースライングリッドがデフォルトOFFなので、影響しません。


ここまで設定を変更したら、これを段落スタイルに登録します。登録方法は、段落パネルの[スタイルなし]をクリックし、「New Style...」をクリックします。

なお、私が本文で使うスタイルにする場合は、以上の設定に加えて、1行目のインデント(1文字分)の設定※、および括弧類の起しが行頭にきた場合の設定(Affinity Publisherで日本語処理(3)を参照)を追加します。


※もし知らない人がいたら、ということで説明します。

段落の始めに全角スペースを入れている原稿が来ることがありますが、ジャスティファイ(均等割付、頭末揃え)の際に全角スペースでは、全角以上の字下げ幅になる場合があります。これを嫌って、段落始めの全角スペースを削除し、1字下げにします。