Word/PowerPoint 向け Adobe Creative Cloud アドインを使ってみた
これはDTP Advent Calendar 2019の5日目の記事です。そして前回の続きです。前回はインストールまでの手順と基本的な使い方を説明しました。
今回は登録したアセットがどこまで使えるのか、ということを書きます。ただし、全てを調べて書こうとするとかなりの分量になるので、とても一回では終わりません。そこで、対象を絞って書きます。
今回はWordとInDesignのみです。しかも、カラー関係とテキスト関係だけです。一番知りたいかもしれない、Wordでのグラフィックの配置については(あれば)次回以降になります。
また、CCライブラリはIllustrator、Photoshop、PowerPointなどでも使えるんですが、とても調べ切れないので、いずれ余裕があれば検証します。
まずInDesignでCCライブラリに登録できるものをおさらいしておきましょうかね。次のものが登録できるはず。
カラー、カラーテーマ、テキスト、文字スタイル、段落スタイル、グラフィック
詳しくは「InDesign の Creative Cloud ライブラリ」をご覧ください。また、CCライブラリ全体については「Creative Cloud ライブラリ」をご覧ください。ちなみにこの文書の中のFAQで
Q. アセットはどこに保存されますか?
A. アセットはデバイス上にローカルに保存され、Creative Cloud と同期されます。
とありますが、Windowsの場合、ローカル保存先は
C:\Users\[UserName]\AppData\Roaming\Adobe\Creative Cloud Libraries\LIBS
です。もし同期がおかしいなと感じたらこの中身を空にすれば同期し直してくれるはず。多分。
Wordで登録したカラーをInDesignで使用
Wordでカラーを登録するとRGB値で登録されます。これをInDesignのスウォッチにコピーして使えます。また、次のように「自動」の場合は「R=0 G=0 B=0」になります。
InDesignで登録したカラー/カラーテーマをWordで使用
Wordで使用する場合は、色を付けたいテキストを選択した状態でアセットをクリックします。カラーテーマの場合は、複数のカラーが並んでいますが、その中の一つの色をクリックします。すると、文字の色が変わります。WordはRGBしか扱えないので、CMYKで作成されたカラーはRGBに変換されます。変換方法については知識がないので分かりませんが、「C100」は「R0G160B233(#00a0e9)」になりました。
Wordの場合、使えるのはテキストだけです。図形を選択してクリックしても反映されません。まあ、図形には線の色と塗りの色があるので、すぐに対応というのは難しいでしょうね。
Wordで登録したテキストをInDesignで使用
もしかしたら期待しているかもしれませんが、これが全く使えません。まず、Wordで登録できるテキストに文字数の制限があります。『銀河鉄道の夜』をWordで組んで登録しようとしたんですが、最大の文字数は図のようになります。どこがリミットになっているのか分かりませんが、おおよそ4,900文字までです。
これを超えると「追加しようとしている文字が長すぎます。文字数を減らしてください。」というメッセージが表示されて登録できません。
また、後で書きますが、フォント情報をInDesignが理解できる形で渡すことができません。
そのため、InDesignで配置しようとすると、フリーズしたかのような長い時間待たされ、挙句の果てにおなじみのダイアログが出ます。そして結局配置することはできませんでした。
実はCCライブラリに登録したテキストはJSON形式で保存されます。上で書いたフォルダの中を探すと、拡張子がtext-json(なんて長い拡張子!)になっているファイルがそうです。テキストファイルなのでエディタで中を見れば何が書いてあるのかすぐに分かります。もしCCライブラリに登録しているテキストを変更したい場合はここで直接いじれるかもしれません。
さて、非常に時間がかかる原因ですが、データの情報量もすごく多いんですが、Adobe Fontsの仕組のせいでフォントがあるかどうかのチェックに以上に時間がかかっているのではないかという気がしています。気のせいかもしれませんが。
いずれにせよ、私がやった限りは全然配置できなかったので、そもそもできないのか、何かバグがあるのかは不明です。InDesignにはWordデータを配置する機能が昔からあるのでそっちを使いましょう。
InDesignで登録したテキストをWordで使用
こちらは持ってくることができます。ただし、フォントについては正しく反映されないと考えてください。WordとAdobeソフトでは元々フォント情報の持ち方が違うので当たり前と言えば当たり前なんですが、折角アドインを作ったのならこんな当たり前のことは処理して欲しかったなあという気持ちです。
ソフト | Font Family | Font Style |
---|---|---|
InDesign | 小塚明朝 Pr6N | M |
Word | 小塚明朝 Pr6N M | 標準(normal) |
こんな風に持っていますから、InDesignからのデータは、フォントが「小塚明朝 Pr6N」で、スタイルが「M」になります。Wordではスタイルは「標準」「斜体」「太字」「太字斜体」しか理解できないので「小塚明朝 Pr6N(標準)」となってシステムにないフォントとして扱われてしまいます。
WordからInDesignに渡すフォント情報も同様です。Wordからは「小塚明朝 Pr6N M(normal)」というフォント名で情報が登録されます。そのためInDesignではファミリー名が「小塚明朝 Pr6N M」、スタイル名が「normal」というフォントを探そうとします。そのため、絶対に見つからないわけです。(これはtext-jsonファイルを覗いて判明しました)
Wordで登録した文字スタイル・段落スタイルをInDesignで使用
フォントについては先に書いた通りです。文字サイズ・インデント・行送り・段落前後のアキについては問題なく持っていけます。ただし、行送りは固定値以外はちょっと怪しい感じです。例えば文字サイズ11ptで「行間:2行」の場合、CCライブラリに登録した時点で「行送り:24pt」になります。
InDesignで登録した文字スタイル・段落スタイルをWordで使用
こちらも行送り以外は問題なかろうと思います。行送りを固定値にしてほしかったんですが、そうではなくて残念な仕様です。例えば文字サイズ11Qで行送り16Hの場合はこうなります。
倍数表示になります。もし倍数の値が1とか2といった整数値になると「1行」「2行」という表示になります。
Wordで登録した文字スタイル・段落スタイルをWordで使用
最後に、Word同士での互換性についてテストしました。例えばあるドキュメントで設定した段落スタイルを別のドキュメントで使いたい場合に、CCライブラリはマスタとなりうるか、ということです。
答えは今まで書いてきたことと同じで、やっぱり行送りの設定がおかしくなります。CCライブラリに登録した時点で、Wordのネイティブなデータではなくなります。そしてWord上のテキストに設定すると行送りが異なってしまいます。ということで使えません。素直にドキュメント間でコピー&ペーストしましょう。
以上でカラーとテキスト関係の検証は終わりです。こうして見ると、なかなか使いどころが難しいなあという気がします。
なお、検証は全てWord 2016(Windowsデスクトップ版)とInDesign 2020(Windows版)で行っています。もしかするとMac版だったり、ブラウザ版(Online版)では結果が異なるかもしれません。もしよければテストしてみてください。