Illustrator 28.4.1、27.9.3、ほか4月上旬のできごと
4月上旬にパタパタとIllustrator関連トピックを連続で目にしたので、軽くまとめておきます。なお、4月10日に4月のセキュリティ情報が公開されるので、Illustratorの情報があれば追記します(追記しました)。
Illustrator 28.4.1(2024)
リリースノートはこちら。4月に出たにもかかわらず、2024年3月アップデートです。しかも28.4ではなく28.4.1です。つまり、3月に28.4としてリリースしようとしたものの、何らかの理由で4月に延びて、しかも修正が入って28.4.1となったということです。新機能や修正された問題では28.4となっていますが実際は28.4.1ですので注意してください。これが英語版の新機能ページや、英語版の修正された問題ページでは28.4.1となっているので、日本語ページの手抜き(修正漏れ)です。
28.4.1の新機能は2つ。「テキストからベクター生成の出力をさらに微調整」ではパネル内のレイアウトがさらに変更されてます。これで2回目? 3回目? よくわからないですが今後も変更されるんでしょうね。「パンとズームの改善」については後ほど。
Illustrator 27.9.3(2023)
こちら(2023)はメンテナンスモードで、基本的にセキュリティ修正しか行われません。しかし、前回の修正(27.9.2)で、アプリケーション名が「Illustrator 2024」と表示されるというとんでもない失態をやらかしたので、その修正になります。UserVoiceの方の管理者コメントが「修正したよ」に変更されたんですが、「root cause(根本原因)」が何だったのか、再発防止のために何をしたのかといったことをどこかでアナウンスしてほしいですね。
あと、27.9.2は使用禁止バージョンになったので、CCデスクトップアプリケーションからインストールできないようにしてほしい。(他のバージョンから見えている。インストールは試してない)
ドロップシャドウ等が低解像度になってしまう危険なバグ
これは2021から発生していたバグらしいですが、今になって再認識されています。Adobeコミュニティフォーラムの投稿がきっかけ。
発生する環境は、
- Mac
- 環境設定の「GPUパフォーマンス」のチェックをON
- 環境設定の「リアルタイムの描画と編集」のチェックをON
の場合で、ドロップシャドウなどスタイライズの効果を適用したオブジェクトを移動したり色を変更したりすると粗くなる(72dpi程度)というもの。UserVoiceにも投稿されています(複数の投稿が統合されました)。
詳しい再現手順などについてはTen Aさんがまとめています。
拡大縮小やスクロール時にアートボード、ガイド等が表示されない
これは28.1から発生しているらしいです(私のところでは発生していないので、バージョンとOSの組み合わせで何かあるかもしれません)。現象はGPUプレビューにしていると拡大縮小時やスクロール時に、ガイド、グリッド、アートボード枠などが消えるというもの。静止すれば再表示されるのですが、細かくスクロールしたりすると画面がチカチカして気持ち悪いということです。
X(旧Twitter)でhamkoさんが以前から問題にしていて、Adobeコミュニティフォーラムにもあります。これとこれ。
UserVoiceの方でhamkoさんが動画を上げているので、そちらの方でもご確認ください。
UserVoiceでは寄ってたかって不便だと言っているわけですが、それには訳があります。それは管理者の最初のコメントです。
this is a known limitation, caused by a recently added method of boosting the speed of zooming and panning while in GPU Preview mode. Artboards edges, along with grids and guides, are considered as 'annotations' by the engine, and have to be temporarily disabled while contents of the document gets streamed while panning and zooming.
This is important for me, and I hope it is for others. It should definitely upvoted more to persuade the team to improve it further. The team is aware, but more votes always count.
(Google翻訳)
これは既知の制限であり、GPUプレビューモードでのズームとパンの速度を上げる最近追加された方法によって引き起こされます。アートボードのエッジは、グリッドやガイドとともにエンジンによって「注釈」とみなされ、パンやズーム中にドキュメントのコンテンツがストリーミングされる間は一時的に無効にする必要があります。
これは私にとって重要なことですが、他の人にとってもそうであることを願っています。チームにさらに改善するよう説得するには、間違いなくもっと賛成票を投じるべきです。チームはそれを認識していますが、常により多くの票が重要です。
ちょっと注釈が必要なのですが、IllustratorのUserVoiceの管理者であるEgor Chistyakovさんは開発チームではないばかりかAdobe社員ですらありません。そのため、管理者として開発チームを代弁するも、時として開発チームと対峙することがあるという、素敵な方ですね。
ではこのコメントを解説します。アートボードやガイドが表示されないのは、GPUプレビューモードの速度を上げた結果だと言います。つまり28.4.1の新機能「パンとズームの改善」のことを言っています。この機能は実は28.1で実装されたんですが、28.1では言及されておらず今頃になって言及した形です。Illustratorチームはこういうふざけたことをよくやります(過去にはパスの単純化の大幅強化やエンベロープの上弦・下弦の名称変更が、異なるバージョンで告知されています)。
つまりアートボードやガイドが表示されないのは開発チームが意図的に行っており、これを機能改善だと認識しているわけです。それを裏付ける検証が鯵さんによって行われています。
Illustrator28.x:スクロール中にガイドが消えちゃって困るので応急策
このコメントの後半ではこの問題が管理者(Egor Chistyakov)にとっても非常に重要であり(すなわち改善を希望。2回目のコメントで更に強調)開発チームを説得するにはもっと投票が必要だと言っています。
つまり前半では開発チームの意図を伝え、後半では自分の意見(それには反対)を言っているんですね。
まあ、管理者にもこう言われている始末ですから、開発チームがいかに使用している現場を見ていないかが一目瞭然です。ほんとにユーザーみんなで寄ってたかって苦情を言わないと、彼らは押し通しちゃうかもしれません。
セキュリティ修正(4月10日追記)
予想通りセキュリティ修正が出ました。
https://helpx.adobe.com/security/products/illustrator/apsb24-25.html
Illustrator 28.4と27.9.3で修正済みになっています。じゃあ、27.9.2は何だったんだ。ということになるわけで、本当は27.9.2で修正を入れたんだけど別の問題が発生したので27.9.3で修正されたことにしようってことですかね。
ちなみに修正内容はInDesign 19.3および18.5.2に入っているものと同じと思われます。さらにPhotoshopやBridgeにも同じように入っています。メモリリークなので、個人的にはこまめに保存しておけば適用しなくても問題ないかなと思っています。