InDesign 2024(19.0)リリース1週間でわかったこと
InDesign 2024(19.0)がリリースされて1週間たちました。その後いろいろ情報が入っていますのでまとめました。
(Windowsのみ)2023と2024のCLSIDが同じで、2023の設定が2024で上書きされる
直前のエントリで書きました。これは開発者にとって非常に大きな問題で、これが修正されるまでopen_the_inddの2024対応版は公開できない状態になっています。開発チームでは問題を認識し、修正に向かって動いていますので、少なくともInDesign Serverが出るまでには解消されると思います。 19.0.1で修正されました。次の記事を参照。
(Macのみ)インストール時に「以前の設定および環境設定を読み込む」にチェックを入れているのに設定が引き継がれない
サポートコミュニティやUserVoiceにいくつか報告があります。
前バージョンまでの設定が移行されないInDesign 2024 - Missing Document Presetsupdate to v24Installing InDesign 2024 wiped all my preferences and workspaces
など。 19.0.1で修正されました。次の記事を参照。
書き出されたPDFファイルがエラーになる
これは18.4で発生したPDF書き出しの問題です。18.5で修正されたかのように思えましたが、19.0でも引き続き発生しています。
18.4 and 18.5 exported PDF corrupted
コメントが追加されていますが、「Agfa Apogeeにおいて、PDF のプリフライト時に構文エラーを表示し、その後の処理を停止します」ということ、さらに「このPDFファイルを18.3に配置してPDF書き出しをすると解消される」ということです。(18.4と同時リリースされた17.4.2では問題が報告されていないことから、18.4で追加されたPublish Onlineの新機能に関して発生しているものと推測しています。追記にあるようにIllustratorでも発生しているということなのでこの推測は外れました)。
そのため、18.4以降の機能を使う必要がない場合はInDesign 2023は18.3で止めておくということが確定的になりました※。印刷関連のお仕事をされている方は十分注意してください。
バリアブルフォントの問題
私は確認していないのですが、UserVoiceの方で複数報告があります。太いウェイトを指定しても一番細いウェイトになってしまうという問題のようです。(11月10日追記:Photoshopでも発生しています)19.1で修正されました。
Problem with Variable font weights.
ESTKでオブジェクトモデルのXMLが作成できない
ESTK(ExtendScript Toolkit)を使っている人は少ないかもしれませんが、(Windowsだけ?)初めてInDesignに接続しようとすると(あるいはオブジェクトモデルビューアを開こうとすると)、そのタイミングでオブジェクトモデルのXMLファイルが作成されます。これが、2024では作成開始直後にハングアップします。
バージョン18では作成途中でハングアップしていたんですが、最低限必要な分(omv$indesign-18.064$18.0.xml)は作成されていました。(XMLファイルは、ファイル名の降順に作成されます。9.0、8.0、7.5、……、3.0、18.0、17.0、……、11.4まで作成されて11.3~10.0はハングアップで作成できない)
それがバージョン19では最初の9.0を作成しようとしてハングアップしてしまいます。そのため私のInDesignオブジェクトモデルを更新できていません。
使用する分には「omv$indesign-18.064$18.0.xml」をコピーして「omv$indesign-19.064$19.0.xml」に名前を変えることで一応は使えるのですが、これでは19.0で追加された機能が使えませんし、変更があったとしたらその部分がおかしくなります。これは困ったもんだなあ、と。もし誰かomv$indesign-19.064$19.0.xmlを取得できた方がいましたら、私に連絡を頂けると幸いです。(コメントあり)
いくつかの新機能はユーザーリクエスト
UserVoiceの更新情報を見て気づきました。次の新機能は5年以上前のユーザーリクエストでした。5年たってようやく実現に漕ぎつけたのか、新機能不足だったので古い要望を追加したのかはわかりません(笑)
スプレッドを隠す
JPEG および PNG の書き出しでのファイル名の接尾辞
機能の詳細はこちら。ここで「ページサイズ」が含まれるのは何でかなと思ってたんですけど、ユーザーリクエストだったんですね。
(バグ)段落の囲み罫で、間隔のカラーのオーバープリントが効いてない
これは2024に限らず、以前のバージョンにも含まれるバグです。私も2019と2024で確認しました。
Paragraph border gap does not overpint
これに限らずあまり使われない機能で、まだ知られていないバグはあると思います。私も「割注が1行に20カ所あって、21カ所目を作成しようとするとクラッシュする」バグとか、「割注の中に強制改行を入れると文字間が開く」バグとか報告してないですし。
あまりないと思いますが念のため。
— お~まち@組版仕事ないですか (@CS5_omachi) June 5, 2023
InDesignでは1行に使用できる割注の数は20カ所までです。21カ所目を設定しようとするとクラッシュします。#UserVoiceに投稿しなきゃ https://t.co/lFR8UMh6OZ pic.twitter.com/WLZSgjcxUY
(Windowsのみ、18.4以降)PluginConfig.txtの仕様変更
18.4で修正された問題について、PluginConfig.txtの記述がありましたが、その詳細な文書を発見しました。
[Windows のみ] InDesign バージョン 18.4 以降でのプラグイン設定の変更
大多数の方には関係ない(主に開発者向け)と思いますが、PluginConfig.txtを使用してInDesignのプラグインの有効/無効を制御されている方は注意してください。
まだ1週間ですので、これからも問題が発見されるかもしれません。
仕事で使用されている方は19.0の使用はまだ早いです。少なくとも最初のアップデートが出るまで待ちましょう。
※追記(PDFがエラーになる件)
現在PDFの出力でエラーが発生しているのは、UserVoiceのコメントを見る限りエコスリーのApogeeのみが判明しています。スクリーンのEQUIOSなどではそういった情報はありません。(記事を書いた当初は「エラーが発生する機器の中にApogeeが含まれている」という認識でした。記事公開後、EQUIOSでは発生していない」という情報が寄せられました。その他の機器での情報はありません)。これは、Apogee側で対処するということも考えられます。そのため既に18.5を使用している方の判断としては、出力先がどの機器を使っているか、あるいはこの問題を認識し対応できているかということを確認してから行った方がよいでしょう。
「出力先が決まっていないがPDFで入稿する予定である」というのが一番トラブル(再提出を依頼されるなど)に巻き込まれやすいので、そのことを考慮すれば18.3に留め置くべき、という話です。(広告部分だけの依頼でPDFで納品、ということもわりとあると思います)。
なお、18.4ではセキュリティ修正を行っており、それとどっちが大事かという話になると思いますが、InDesignの脆弱性を攻撃しようとするには「不正なコードが含まれるInDesign関連ファイル」「不正なコードが含まれる画像ファイルなど」をターゲット先に送る必要があるので、かなり難しいでしょう(狙い撃ちされる場合は別です)。
更に追記:2023年10月19日
面付ソフトFACILISのサポートに情報がありました。
FACILISにて面付け後、ページ抜けが発生する(InDesign CC(2023)/Illustrator CC(2023)由来のPDFデータ)
これによると、Illustrator 27.8.1、27.9でも発生しているようです(修正されていなければ28.0でも発生するでしょう)。
追記:2023年10月20日
吉田印刷所の笹川さんによると、Illustrator 27.9で作成したPDFファイルをDocuCentre-IV C2264(非APPE)に出力しようとしたときに発生したということです(エラーではなく白紙が出力される。FACILISサポートと同じ状況)。
UserVoiceの方にコメントが追加されました(日本時間19日21時9分)。
We just installed a new version of Apogee Prepress software and upon talking to a resource with the company I was shown that they have a specific hotfix applied in their new version 13 software that addresses this problem that InDesign exporting has caused.
すなわち、Apogeeのバージョン13においてこの問題に対処する修正が行われたということです。
※次の記事にその後の追記があります。