InDesign 19.5が出ましたね。19.xはこれで最後(よほどのことがない限り)
InDesign 19.5が出ています。が、その前に、その直前に出たセキュリティ情報について書いておきます。おさらいになりますが、Adobeは毎月第二火曜日(日本時間だと翌日になるので、カレンダーの関係で第二水曜もしくは第三水曜になります)にセキュリティ情報を公開しています。今回はInDesign 18.5.3(6月14日にアップデート)と19.4で修正された内容になります。
https://helpx.adobe.com/jp/security/products/indesign/apsb24-48.html
相変わらず先に修正されたバージョンをリリースして、その1~2か月後にセキュリティ情報を出すっていうサイクルなんですが、それについてはこうすべきという知見は持ち合わせておりません。素人考えでリリースノートの最後にでも書いておけばいいんじゃないのと思うんですが、話が逸脱するのでやめておきます。
さて19.5ですが「リリースノート」はバージョン番号と日付が変わっただけで、新機能が抜けている状態は修正されていません。これで3回連続ですね。前回直してほしいとお願いしたんですが、届かなかったようですのでちゃんと伝えました。次回は直っていることでしょう。
修正された問題
まず修正された問題から見ていきます。
「18.4 and 18.5 exported PDF corrupted」は19.3のときに一度直ったとされて実は直っておらず、19.4で直りました。ただしその時点ではまだ完全に解消したかどうか不明だったのですが、その後「再発してる」という報告がなかったため、今回の修正された問題に含まれたということでしょう。InDesignの既知の問題からも削除されています。これでやっとPDF出力時の不安がなくなりました。
それ以外の修正事項は、該当する人だけ検討すればよい内容ですので、19.4は安定して使えるバージョンだということです。19.5もアップデートが出て10日ほどたちますが、今のところバージョン特有の問題は出ていないので、使っていけそうな雰囲気です。
日本語版の新機能
新機能ページには4つの新機能が掲載されていますが、日本語版のユーザーにとっての新機能は1つだけです(追記あり)。それはヒストリーパネルです。こちらについては既に「InDesignの勉強部屋」で書かれていますのでそちらも参照してください。操作履歴を記録するものですが、私は多分使うことはまずないと思います。それは次の注意事項があるからです。
- 新しいドキュメントでは、保存するまでの履歴は作られない
- 保存したドキュメントを開いても以前の履歴は残されていない
ですからちょっと使いにくいかな、と。ただ、パネルメニューの「新規ドキュメント」は、指定した操作時点での新しいファイルを作ってくれるので、従来の「別名で保存」「コピーを保存(複製を保存)」よりも使いやすいかなと思います。
余談ですが、ヒストリーパネルとは別に「ドキュメントのヒストリー」を見る方法はご存知ですか? ドキュメントを開いた状態で、⌘(Ctrl)キーを押しながら[InDesignについて...]をクリックするものです。
このように、いつどのバージョンで作成して、いつどのような方法で保存したかがわかります。文法が日本語でないので、おかしな表現になってますが。
早速バグ発見か
新機能のうち、「いくつかの簡単な手順でのテキストの大文字と小文字の変更」は日本語版には含まれません。しかし、19.5にアップデートして初めて「検索と置換」ダイアログを開いたときに次のウィンドウが出ます。
(テキスト検索)
まず、テキスト検索ではこの機能はないので、ウィンドウが表示されることはおかしいです。(追記参照)
(正規表現検索)
正規表現検索の方はまだ確認してません。というのも[詳細情報]をクリックするとWebページを開こうとするのですが、「ページが見つかりません」となります。一応英語版のユーザーガイドの該当ページを貼っておきますね。
開発者向けの機能
「UXP 3P プラグイン開発者向けの GUID サポート」はなぜか修正された問題にも入ってますが、これはUXPプラグインを開発する人向けの機能で、一般ユーザーには無関係のものです。「3P」とは「サードパーティ」のことです。本当は「Third Party」なんでしょうが、これを「3rd Party」と書いたときの略ですね。Googleで「3Pとは」で検索しても色々出てきすぎてわけわかりません。
生成拡張で画像を拡張(ベータ機能)
これはAdobe Fireflyの機能を使って、画像フレーム内の画像のない部分を補ってくれる機能です。Photoshopをほぼ最新環境で使っている人はわかると思います。これは現在、国際英語版と北米英語版にのみ搭載されていて、日本語版には搭載されていません。
InDesignでAdobe Fireflyの機能を使うのはこれが2つ目です。1つ目はテキストから画像生成ですね。これは以前、埋め草を作るのにぜひ欲しいと書きましたが、今回の機能もぜひ欲しいものです。それは誰もが思いつくでしょう。塗り足しのない入稿データ。それを印刷できるように修正するのが格段に楽になると!
しかし残念ながら、現時点でのこの機能はそれには使えません。それはこの機能を紹介したコミュニティフォーラムのコメントにあります。この機能は現在、RGBのPNG画像、JPEG画像でのみ機能するようです。CMYKのJPEG画像はRGBに変換されるらしく、TIF および PSD では、生成拡張機能がグレー表示されているとのことです。埋め込み画像(InDesignに埋め込まれた画像はEPSになります)には言及されていませんが、多分使えないでしょう。そもそも、Adobe FireflyがCMYK画像に対応しているという話は聞いたことがありません。もしかしたらFirefly開発部隊はCMYKの存在すら知らないかもしれません。ですから、DTPの現場で使えるようになるには相当の時間がかかる気がします。実現するためにはFireflyのDiscordに参加(日本語の専用チャットがあります。Adobe Community Expertの松野美穂さんがほぼ常駐)して、声を上げ続けるしかないのかな。私はそこまで手を拡げることができないので、有志の方お待ちしております。
Convert PDFs to InDesign
これはベータ版のInDesign 19.5の英語版の機能です。ここで説明している正式版ではありません。正式版ではおそらく20.0以降のベータ機能として英語版のみに搭載される可能性が高いです。
PDFファイルをInDesignデータに変換してほしいというのは、InDesign UserVoiceでもかなり票を集めている要望です。実はPDF2IDというInDesignのプラグインがすでに販売されているのですが、それと似たような機能ですね。ちなみにPDF2IDは日本語には対応していません。日本語に対応しているのはPDFtoIDという名称(2→to)になります。以前から知ってはいるのですが、あまりに高くて使ったことはありません。開発元のレコソフト株式会社は実は大阪にあったりします。
話を戻しまして、ベータ版19.5英語版に搭載されている「Convert PDFs to InDesign」機能はすでに英語版のユーザーガイドにも掲載されています。そこで手順や仕様を確認できるのですが、PDF2IDが色々設定項目があるのに対して、InDesignベータ版の方は設定項目が一切ありません。[開く]からPDFファイルを選択するだけです。ただし、現時点ではInDesignで作成したPDFファイルにしか対応していません。また、ファイルサイズやページ数にも制限があります。
これが将来、Illustratorで作成したPDFにも対応出来たらデザイナーがIllustratorで作成したレイアウト指定紙を取り込んだり、Microsoft Officeから作成されたPDFにも対応出来たら顧客データを楽に取り込めたりと、期待は大きいのですが。まあ、その頃には私はもう仕事をしていないかもしれませんね。
以上で機能の紹介は終わりなんですが、時期的にそろそろ考えなければならないときです。Adobe MAX 2024もすでに発表されており、バージョン18.xをインストールできる期限が10月13日になりそうです。今日Developer Newsletterが出まして、10月に20.0が出ることが案内されました。19.6はありません、ベータ版も19.5止まりですから。私のメインのバージョンは18.3ですので、19.5がこのまま不具合が見つからなければ移行先はそれかなと思います。
ついでに、Illustratorは前の記事にも書いたようにベータ版の最新は28.7です。今日28.6が出たばかりですが、もう1回アップデートが出ますね。Photoshopも今日25.11が出たばかりなのですが、ベータ版25.12があるのでもう1回アップデートがあると思います。
なお、いつものことですがopen_the_inddを使用している方はInDesignのアップデート後、拡張子の関連付けを行ってくださいね。
14:15 追記
正規表現検索で今まで使えていた書き方が一部通用しなくなったとの報告があります。英語版の機能追加で内部的に日本語版にも影響している部分があると考えられます。当面の対応策は19.4にロールバックすることです。
7月25日 追記
MAC版において「データ結合」の機能に変更が入っていました。詳しくはユーザーガイドのデータ結合のページ(「データソースファイルへの画像フィールドの追加」という見出しのところ)を見ていただきたいのですが、画像ファイルパスの記述に変更があります。
【開発者向け】また、DOM(オブジェクトモデル)にも変更があります。実は19.3、19.4にも変更が入っていました。こちらの方は別途記事を起したいと思います。
7月25日 追記2「テキスト検索および正規表現検索の大文字と小文字の変更」
テキストの大文字と小文字の変更は日本語版にも追加されていました。早とちりしてました。次の手順になります。
また、正規表現検索置換では置換文字列の@から「大文字小文字修飾子」が増えています。
最初の文字を小文字にする | \l |
すべての文字を小文字にする | \L |
最初の文字を大文字にする | \u |
すべての文字を大文字にする | \U |
これがややこしいことに「検索文字列」にもこれら4つが使われていることは、正規表現を勉強した方はご存知でしょう。具体的な使い方については、ユーザーガイドには載っていないので自分でテストして確認しなければなりません。簡単なテストをして「多分こうだろう」というのを見つけましたので別の記事を起します。
他にも変更点があるかもしれませんので、見つけ次第追記します。しばらく実務では19.4を使用された方がよいと思います。