Illustrator 29.8.4が出ました。致命的なバグは修正されたが。
12月23日にIllustrator 2025の29.8.4アップデートが来ました。ひとつ前のバージョンなので、いつものようにセキュリティアップデートかと思ったら違いました(セキュリティアップデートも含まれているかもしれません。1月14日の月例セキュリティ情報でわかります)。
ということで、バックグラウンド保存を有効にして保存した際に発生する様々な不具合が解消されたということです。様々な不具合は以前このブログで書いているので、そちらを参照してください。
そのリンク先との比較ですが、29.8.3で消えた「パフォーマンスのために保存を最適化」のチェックボックスが復活しています(図は29.8.4で環境設定をリセット後の状態)。
アクティブなアートボードの境界が2pixelの黒で表示されているのは29.8.3から変わりません。
余談ですけど「#朝までイラレ 5」のなかで岩本さんが「これに間に合わせました」と言っていましたので、岩本さんとしては最優先課題だったんだと思います。
ということで、「私は使用禁止」にしたIllustrator 2025の致命的なバグが解消されたということなんですが、「まだ積み残しはある」。
ものかのさんの「Illustratorのバグのメモ」はかなりありがたい情報なのですが、ものかのさん基準で作成されているため、ものかのさんが軽微と判断したものは記載されていません。「カラーパネルにCMYKの数値を打ち込む際、タブで移動すると入力が無効になって表示が消える」(30.1でも継続中)、「29.2.1で追加されたB判および名刺サイズが日本のものではない」(30.1でも継続中)や、新たに発見されるかもしれないバグ(致命的なバグのせいで多くの人が29.3以降のバージョンを使わなくなったため、まだ発見されていない)があります。
ただ、2026がリリースされた後のアップデートということで「これ以上悪くなることはない」とは言えそうです。2025を使おうが2026を使おうが、現時点ではバグの数は変わりません。違うのは「2025はこのまま、2026は改善されるかもしれないしバグが増えるかもしれない」ということです。
使うか使わないかはそれぞれの現場で検討してもらえばよいでしょう。
ということでIllustratorユーザーにとって今年は散々な年でしたが、これからよくなるという見通しは立っていません。
そもそも誕生から38年経ち、プログラム内部がぼろぼろのIllustratorです(イラレが「軍艦島」状態になっている理由と背景)。
今回のことがあってか、ベータ版ターンテーブルの正式版への搭載は見送られています(以前は「Retype(Beta)」のように開発中のものでも正式版に搭載された)。ただ、一時的な措置ではなく、抜本的に見直されなければならない時期であることは間違いないです。
10月30日(日本時間31日)にAffinityの無料化が発表されて、Illustratorは窮地に陥ったように見えます。しかし、よく考えるとIllustratorを窮地に追いやったのはAffinityではありませんでした。Illustratorが業界以外の使用者を増やそうと、プロパティパネルやコンテキストツールバー、「はじめに」ワークスペースを追加してきましたが、それらをしてもIllustratorに人は来ません。どこに行ったかというと、それはCanvaです。豊富なテンプレート、圧倒的な使いやすさ、基本機能は無料ということで今までデザインと縁のなかったビジネスユーザーやホビーユーザーを取り込んでいきました。
ただCanvaに不足していたのが、「そこからさらに手の込んだデザインをしたい」というユーザー向けの機能です。そこを埋めるのにAffinityは好都合だったんでしょうね、たぶん。
ですから、Illustratorユーザーはこれから間違いなく減ります。減らさないためにはCanvaに対抗しなければならない。しかし、Canva対抗手段としてAdobeは、Adobe Sparkを大改造してAdobe Expressを出すことにしたのでした。Adobe Expressは今Adobeが一番力を入れている製品です。PDFも書き出せるようになりましたし、アドオン開発者を呼び込もうと様々な施策を打ってきています。
じゃあ、Illustratorの居場所はどこなの?
そこが問題です。
複雑になりすぎたIllustratorは、どれだけ新しいユーザーインターフェイスを作ろうとも、従来の機能を維持したままでは多すぎるメニューを解消することはできません。そのため、Canva⇒AffinityのようにAdobe Express⇒Illustratorという構図が作れないのです。
したがってCanvaに対抗する構図を作るためには「Illustrator」を冠した新しいアプリケーションが必要なのです。生まれ変わらなければなりません(現状のものは「Illustrator Classic」として残しておけばよい)。
実はそのベースはすでにあります。iPad版とWeb版(ベータ)です。インターフェイスがAdobe Expressに近く、機能不足ながらも、既存データを読み込むことができます。(そもそもデータ構造もPostScriptから続いている古い形式に色々追加していて「軍艦島」状態なのですが、いったん置いておきます)。iPad版Web版はモバイル対応ですから非常に軽いというのも魅力です。
しかし、iPad版もWeb版も、ここ1~2年アップデートがされていません。IllustratorはAI生成機能に傾いていて本当に見据えなければならない視点を失っているように見えます。
よいお年を。
