Affinity Publisher 1.8.4ベータでの日本語禁則処理を検証(前置き)
Affinity Publisher 1.8.4ベータ版で、日本語禁則処理が導入されました。正式版にそのまま搭載されるかわかりませんが、おそらく搭載されるんでしょう。ということは以前書いた記事(Affinity Publisherで日本語処理(1)禁則処理)はもうしばらくすると不要になるんでしょうかね。ただ、どの文字が禁則処理の対象になって、どの文字が対象から外れたという情報はまだないようです。これは自分で調べろってことですかね。
実は日本語では、どの文字が禁則処理対象なのかっていう明確な決まりはないんです。一応「JIS X 4051(日本語文書の組版方法)」(Wikipedia)では「文字クラス」という概念を導入して、終わり括弧類は行頭禁止だよとか書いてあるんですが、これはあくまでも指針であって決まり事ではありません。一応、組版ソフトはこれに従うように要請されているわけですが、言葉は生き物、現実的には柔軟な対応が必要です。
たとえば句点の類ですが、一般的には「。.!?」ですが、学校の文集やSNSメッセージの書き起こしなどをやっていると
おはよー♪ またね♥
なんてのが出てきて、この「♪♥」も行頭に来ると(前の文章とのつながりが切れて)好ましくありません。ですから前の文字と分離禁止にして行頭に来ないようにします。こういった配慮は、読み手に理解しやすいように文字を配置する仕事として当然のことだと思います。それの集合知が組版規則なんだと思っています。
まあ、この辺のところは(ちょっと古いですが)過去記事(DTP Booster 019「日本語を組むときの基本」のスライドPDFです)からダウンロードできるPDFファイルを見てください。(そのページに行きたくないという人のためにここにもリンクを張っておきますが笑)
さて、Affinity Publisher 1.8.4ベータ版で導入された日本語禁則処理ですが、どの文字を禁則処理対象にするかという設定項目がありません。上で書いたように禁則処理対象文字は時代や内容によって変化するものなので、それをユーザーが変更できることが望ましいです。事実、Adobe InDesignやMicrosoft Wordでは変更できるようになっています。
例えばInDesignの「強い禁則」、Wordとも、行末禁則文字に「¥」「$」「£」といった通貨記号が入っていますが、そこには「€」「₿」は含まれていません。そのため為替等を扱う文書を作成する場合には、自分で「€」「₿」を行末禁則文字に含めなければなりません。(そもそも「₿(ビットコイン)」自体が「JIS X 0213」に含まれていないので「JIS X 4051」で定義できない!)
ところが、Affinity Publisher 1.8.4ベータ版では設定項目がないので、新しい通貨記号が出たり、特定の文字をした場合は、自分で対象の文字に分離禁止を設定しなければならないわけです。その方法は、以前書いた記事(Affinity Publisherで日本語処理(1)禁則処理)にもある通り「検索して置換」で一発でできます。ですから大した手間ではないと思われるかもしれませんが、その場合「どの文字を禁則にしたか」という記録が残らないので、修正時に大変なんです。
余談ですが、禁則処理対象文字を変更できない代表的なものとしてWebがあります。Webで文章は読みにくい。横組というのも原因にあるけど(漢字は縦組を前提に作られている文字)禁則処理や約物文字幅など日本語の事情をほとんど考慮していない設計になっているので。ですからWebで禁則処理をきちんとやろうとするとめちゃくちゃ大変です。該当する文字を<span>で囲ってクラスを付けてCSSでwhite-space: nowrapを書いて。なぜ<nobr>タグを廃止した!
ということで前置きはここまでです。次の記事で現状どの文字が禁則処理対象になっているかを調べて一覧にします。ただし、すべての文字を調べられるわけでもないので(フォントによって表示できない文字もある)抜粋となることをご了承ください。