Affinity Publisher 2で日本語処理(2)版面設計

3年半前のバージョ1.7のときの記事は、例文を元に、目立つところから順に改善策を講じていたので、体系的に理解したいときには面倒な内容だったと思います。そこで今回はなるべく実作業に沿った形で進めていきたいと思います。

小説などの文字が主体の本を作成したい場合を考えます。そのとき本文の体裁を考えますが、次のことを最初に決めます。これを版面設計(はんめんせっけい)とかレイアウト設計と言います。

  1. 判型(本の大きさ)
  2. 組方向(縦組みか横組みか)、それに付随する綴じ方向(右綴じか左綴じか)
  3. 文字サイズ(文字の大きさ)
  4. 書体
  5. 行長(1行の長さ)・段数
  6. 行数・行送り
  7. 余白の割り振り

私も含め、多くの日本語組版に携わる人はだいたいこの順番で考えると思うのですが、ページレイアウトアプリケーションを操作するときは必ずしもこの順番で操作できないということがあります。新しくドキュメントを作成する場合にどこで設定するかを比較しました。

順番 項目 Affinity
Publisher
InDesign
新規マージン・段組
InDesign
新規レイアウトグリッド
1 判型 新規ドキュメント 新規ドキュメント 新規ドキュメント
2 組方向 なし 新規マージン・段組 新規レイアウトグリッド
2 綴じ方向 新規ドキュメント 新規ドキュメント 新規ドキュメント
3 文字サイズ 文字パネル 文字パネル 新規レイアウトグリッド
4 書体 文字パネル 文字パネル 新規レイアウトグリッド
5 行長・段数 テキストフレームパネル 新規マージン・段組 新規レイアウトグリッド
6 行数 テキストフレームパネル テキストフレーム設定 新規レイアウトグリッド
6 行送り 段落パネル 段落パネル 新規レイアウトグリッド
7 余白の割り振り 新規ドキュメント 新規マージン・段組 新規レイアウトグリッド

このように、Affinity PublisherとInDesignの「マージン・段組」はほぼ同じで、設定項目がいくつもの場所に分かれています。それに対しInDesignの「レイアウトグリッド」は1つの画面の中で納まっているため日本語組版の事情をよく考えて取り入れています(それが売りです)。

ですから、Affinity Publisherで新しくドキュメントを作成する際には「余白(マージン)の割り振り」を行わなければならないのですが、実はその値を決めるためには、それより前の設定(文字サイズ~行送り)を事前に決めておかなければなりません。

そのため、それを決めるために仮のドキュメントを作り、そこで文字サイズや書体を試行錯誤して決定し、それから本番のドキュメントを作成するという段取りになります。面倒ですがきちんとしたものを作りたいという場合はこの手順を踏むしかありません。

これDTP以前から「組見本」という名前で存在しています。実際に組み始める前に数ページを仮に組んでみて、読みにくいところがないか、内容の雰囲気を正しく伝えられているか、実際に組んだ時におかしくならないか(例えば長い見出しがあって、予期せず2行になってしまい収拾がつかなくなるということがないか)ということを検討するものです。(まれにこれを初校と勘違いして赤字を入れてくる人がいますが^^;)

なお、版面設計の考え方についてAffinity Publisherの操作から大きく外れるのでここでは扱いません。非常に重要なところですから、私なんかの言うことよりもっと適切に教えてくれる書籍とかあると思いますのでそちらを参考にしてください。(そういいつつ私も言及してたりする→自動行送りなんて使うな(2)

ここで言いたいのは、「本を作ろうとしていきなAffinity Publisherを開いても何もできません、まず設計を」ということです。