自動組版の新しい道具、Affinity Publisherのデータ結合(1)
だいぶ遅いですがあけましておめでとうございます。
2021年一発目の記事はAffinity Publisherです。現行のバージョンは1.8.5(Windowsの場合)などですが、ベータ版では1.9.0を試すことができます。1.9の新機能としては
- PDFブックマーク
- PDFパススルー(配置されたPDFファイルを再解釈することなくそのまま出力)
- PSD flattened image representation(配置されたPSDを再解釈することなくフラット化されたビットマップを出力)
- ピクセルレイヤーを画像レイヤーに変換
- テキストフレームの開始位置オプションを追加(デフォルト、アセント、行送り、ポイント、先端高さ、X高さ、固定)
- パステキストの制御の追加
- 裁ち落としとマージンガイドの色が変更可能に
- データ結合
- パッケージ
- スタジオプリセット
- Affinityストアから購入または受信したコンテンツを直接ストリーミング
- 日本語訳の修正
などがあります(バージョン1.9.0.887時点、以下「現時点」と書きます)。
嬉しい改善点が多いのでいろいろ紹介したいのですが、それをすると長くなりすぎるので割愛して、今回はデータ結合だけ取り上げます。
InDesignをお使いの方は「データ結合」という言葉は知っていると思います。詳しくはタクトシステムズさんのページで。またMicrosoft Wordをお使いの場合は「差し込み印刷」という機能が近いと思います。Affinity Publisherのデータ結合は、InDesignやWordとはまた違ったアプローチをします。手順はあとで書きますが、その前にAffinity Publisherのデータ結合の特徴を書いておきます。
まず作成できるパターンですが、ページを複製するパターンとコマを複製するパターンの両方できます。
データソースは、CSVテキスト(.csv)、タブ区切りテキスト(.tsv)に加えて、Microsoft Excelファイル(.xlsx、.xlsm)、さらにJSONファイル(.json)が使えます。なお現時点でのWindows版の場合、タブ区切りテキストは拡張子をtsvにしないといけません。各テキストファイルのエンコードはシフトJIS、UTF-8が使えます。InDesignで使えるUTF-16は正しく認識してくれませんでした。しかしUTF-8が使えるというのは、それだけでInDesignユーザーにとっては垂涎ものでしょう。なお、InDesignのデータ結合でUTF-8を使えるようにしてほしいという要望はこちら。ぜひ投票してください。
Excelファイルが使えるというのもInDesignユーザーには嬉しいのですが、これは未完成です。現時点では、空のワークシートにテキストだけがある場合には対応できていますが、セルに特定の何かの設定があると解析できません。セル内改行も使えません。どのような情報が残っていると解析できないのかまでは突き止められてはいませんが、今後対応できるようになっていくと思います。
JSONファイルも期待しているんですが、私がテストした限りひとつも解析してくれませんでした。ベータ版のためマニュアルがなく、どのような書き方をすればいいのかわかっていません。単一テーブル形式だけでなく親子関係のある形式にも対応してくれるんだったら最高なんだけどな。これは正式版を待ちましょう(もしかして正式版で外されてるかもですが)。
当然画像ファイルにも対応しています。InDesignのようにタイトル行に@とかは要りません。QRコードには対応してませんね。作成機能がないので当然ですが。
ここまで読んで「これはよさそう」と思った人も多いのではないでしょうか(私もそう思ったので書いているわけですが)。前にも書いたと思いますが、Affinity Publisherは日本語対応その他、DTP業務で使うにはまだまだ不十分です。1.8.4で約物の分割禁止が実現しましたが、縦組、約物文字幅、ルビなどは実現できていません。しかし、データ結合でコマ組を行う場合は、名刺や宛名シールといった、細かい組版機能が不要なもの(名刺は縦組やルビもありますが)が非常に多いと思います。そのため、現状のAffinity Publisherの組版機能で十分という案件も多いはず。そのため、これは「自動組版の新しい道具」と考えているわけです。
1.9の正式版はいつになるか、まだ案内がないですが、今のうちに購入して慣れていただいて(丁度半額セールもやってますし)、1.9が出たらぜひ試してもらいたいと思います。
また、PublisherはiPad版もそのうち出るようなので(開発中です)、iPad初のページレイアウトソフトになると思います。AdobeさんはPC版とiPad版で機能が異なりますが、Affinity Designer/PhotoはPC版とiPad版で機能が全く同じですから、iPad版Publisherも期待が持てます。
さて、このあとの記事で手順を2回に分けて書いていきますが、説明や画像はベータ版のものですので、正式版になったら変更されている可能性があります。そこだけご注意を。