もうIllustratorの在版修正はありえない?
古い話ですが、2019年10月に23.1(CC2019)が出たときに、これはアップデートしてはいけないやつだと感じつつ諸々の理由でアップデートしたことが今でも悔やまれます。
その1つ前の23.0.6は2019年8月に出て、これがバージョン23の最後のアップデートだなと思っていたんです。ところがAdobe MAX(11月4~6日)直前の10月に23.1が出て、まずそのタイミングに驚いたんですが、機能面でも2つの驚きがありました。
- 中途半端な「パスの単純化」の強化
- 組版エンジンの修正
特に2つ目のものは、既存データの体裁を変更してしまうという危険なものでした。
これ以降、Illustratorは年3~4回マイナーアップデートを行い、新機能を追加していきます。これが同じバージョン内でのデータ互換性が保たれているのであれば何ら問題はありません。時々互換性が損なわれるアップデートをするから問題なんです。
以下、参考までにこれ以降のアップデートの記事を掲載します。
- Illustrator 2020徹底検証(新機能、変更点、放置されていること)(実は新機能はない)
- Illustrator 2020(24.1)リリースの新機能・改良点
- Illustrator 2020(24.1)の不具合情報
- Illustrator 24.2(2020年6月リリース)の新機能・改良点
- どこよりも早く、本家よりも詳しいIllustrator 24.3(2020年8月リリース)の新機能、改良点の解説
- バージョン25(2021)2020年10月リリースについてはIllustrator、2020年のアップデート総まとめ
- Illustrator 25.1(2021年1月リリース)の新機能 【アクションまわりで重大な不具合アリ】
- Illustrator 2021(v25.x)アップデートで確認されている問題について(Adobe Support Community)
- Illustrator 2021 v25.2.2からv25.2.3への経緯
- Illustrator 25.3.1(2021年6月リリース)新機能:Illustratorにカンバスの回転が来た!!!
- 2021年10月リリースのIllustrator 2022(26.0)の新機能・機能強化など
- Illustrator 26.1にアップデート
- Illustrator 26.2.1(Adobe公式)
- Illustrator 26.3.1(Adobe公式)
- Illustrator 26.4.1アップデートで可能になった箇条書きと自動番号
- Illustrator 2022(26.5)まとめ
- Illustrator 2023(27.0)の新機能や変更点
このようにマイナーアップデートで頻繁に新機能を追加してますが、とにかく問題が多い。この中で最悪なのが26.4.1です。箇条書きと自動番号の機能が追加されたこと自体はいいんですが、26.3.1以前とのデータ互換性をなくしてしまったのはかなりまずいです。
しかも情報公開も感心しません。これは直近の修正内容ですが「stability fixes(安定性の修正)」とだけ書かれており、何がどう変わったのかわかりません。そのためアップデートすべきかどうかという判断材料が全くないということです。
実は27.1.1では、[エンベロープ]の[ワープで作成...]中の[上弦]と[下弦]の図と文言が違っていたのを修正したのですが、その記述はありません。(書いてる途中で27.3.1が公開され、その中に記述されました)
結局のところ今のIllustratorは、バージョン番号に関係なくアップデートとバグ修正を行っていくため、ユーザーは常に最新環境にせざるを得ない状況に置かれています。特定のバージョンで止めておくという選択肢がほぼないのです。そのため、将来の在版修正のために、作業環境を残しておくというのは容易ではありません。アプリケーションのバージョン(パッチバージョンも含めて)を固定しなければならないのに加えて、データのバージョンも固定しなければなりません。データのバージョンは明示されないので、Illustrator以外のツールを使うか記録しておくことになります。そうなってくると在版修正のコストはかなり高くなってしまいます。
ですから「在版修正」はもう不可能、過去のデータを最新の環境で開いて(当然文字組が変わったりその他のトラブルも考えられる)流用していくということにしかならないでしょう。(結論が中途半端ですが、諸事情によりこれ以上書くのは控えます)